今後、宇宙から得られるデータは、農業、漁業などから金融、保険、サービス、医療、さらには自動運転、防災、防犯まで役立てられていく。精度の高い気象データは、何も天気予報だけでなく、地球上のあらゆる活動に関わり、データアナリティクスやビッグデータとの融合で、今後経済的なインパクトをもたらすことになるだろう。では、宇宙から手に入る地球のビッグデータを使って、ビジネスは具体的にどう変わるのか?清水建設宇宙開発室、JAXA出身の宇宙ビジネスコンサルタント・大貫美鈴氏の新刊『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から、内容の一部を特別公開する。

タイムリーで正確、低価格な気象データは
産業をどう変えるのか?

 宇宙を使えばどんなことができるようになるのか、具体的に見ていきましょう。

 例えば、天気予報があります。

 地球から3万6000キロ離れた静止軌道を周回しているのが、気象衛星ひまわりです。この気象衛星は、地球の画像を撮影して地上に送ってくれています。そのデータをもとに、天気予報が行われているのです。とてもありがたい存在であることは、言うまでもありません。日々の天気予報の他、気象データはほとんどの産業に関係して活用されています。

 ところが最近では、地球のより近くを飛ぶ小型衛星でも気象観測が可能になってきています。革新的な「GPS掩蔽(えんぺい)センサー」が開発され、これを小型衛星に搭載した低軌道の小型気象衛星コンステレーションによる新たな気象観測が行われているのです。

 GPS掩蔽の観測データと、最新の気象予測モデルやデータの融合、AIによる分析などの付加価値の高いデータが提供されます。

 GPS掩蔽はGPS電波の大気伝搬特性を解析して、気温、水蒸気、電子密度のプロファイルを測定できるのです。精密衛星測位による環境監視は長期安定で較正(こうせい)が不要であることから、地球環境変化の長期監視に適しています。

 このように鳥が群れをなして飛ぶかのように、小型衛星が群れをなして宇宙空間を旋回するコンステレーションで大気を計測することができ、気象情報が得られるようになりました。静止衛星で撮影された地球の画像とともに、大気のさまざまなデータを集め、ビッグデータを解析することで、気象を読み取るという新たな手法の活用が期待されています。

 また、GPS掩蔽センサーの他に、「ハイパースペクトル大気センサー」も小型衛星に搭載されて商業気象データを提供しています。

 アメリカでは、これら気象ベンチャーの商業気象情報サービスをアメリカ海洋大気庁(NOAA)や軍などが購入する仕組みの運用ができています。小型衛星の性能向上、コストの低減、打ち上げ機会、コンステレーションによる能力もさることながら、画期的な気象センサーの開発で、キューブサットのレベルで精度の高い気象情報が得られるようになってきたからです。

 ハードウェアとソフトウェア両方の革新により、タイムリーで正確な気象データを低価格で大量に購入することが可能になってきました。