金融、保険、サービス、健康……
未来が変わる予測データ

 衛星観測データの利用は、金融の世界にも出てきています。

 農業の中でも、とりわけ大豆や小豆、トウモロコシといった穀物は、商品先物取引として、金融とも深い結びつきがあります。

 例えば、ボストンに本社を構えるベンチャー企業デルアス・ラボでは、NASAの衛星画像を気象データや農務省からの作物情報と掛け合わせて分析することで、農業生産などを高い精度で予測するツールを開発しています。

 これにより、トウモロコシ栽培の領域では、全米18州の主要地域の収穫予想、収穫面積、総生産量などの指標が把握できるようになり、その確度は非常に高いという評判を得ています。

 これらの衛星データには今後小型衛星のデータも入ってくるのですが、投資銀行やヘッジファンドなどの金融関係者に向けて販売されていくそうです。

 また金融でいえば、天候デリバティブで気象データが経済予測や企業経営に役立てられていますが、衛星データを活用した保険商品も出てきています。衛星データを使って精度の高いリスクアセスメントを行い、現在の地上の保険商品を向上させることができます。
 すでに商品化されているものに天候インデックス保険があります。天候インデックス保険は、リスクを回避するための損保企業の金融商品です。

 例えばミャンマーでは、GDPの約4割を農業が占めていますが、気候変動によって干ばつや洪水などの自然災害が多発しており、農家に大きな被害がもたらされています。

 そこで日本の保険会社、損保ジャパン日本興亜が人工衛星から推定された雨量を活用し、降水量や気温があらかじめ定めた条件を満たした場合、契約上、定められた保険金をミャンマーの稲作農家向けに支払うという保険をスタートさせたのです。

 衛星データを活用した保険商品は、日本でも初めてです。内閣府が行っている「宇宙開発利用大賞」で宇宙政策賞を受賞しました。このような天候インデックス保険に利用される衛星データにも、今後は小型衛星のデータが利用されることになるでしょう。