日本でも、すでにこんな実例があります。衛星データを活用したお茶の栽培です。佐賀県の嬉野(うれしの)では、おいしいお茶の成分を分析し、その成分の状態になるタイミングでお茶の葉を摘むという、衛星データを活用したお茶を開発しました。

 これがおいしいと評判で、「衛星の恵み・うれしの茶」という名前で実際に販売もされています。これはJAXAが開発した大型衛星を利用した事例ですが、小型衛星の利用においても、今後このような事例が出てくることでしょう。

 アメリカのGPSに代表される衛星測位システムで得られるPNT(ポジション・ナビゲーション・タイミング)は現在、社会インフラとして必要不可欠なものになっています。今後はさらに、M2MやIoTなど、位置・時間を利用するサービスの発展を支えるものとして、衛星測位システムに対する期待は非常に高くなっています。

 特に近年は、携帯電話機やスマートフォン、タブレット端末、また、スマートウォッチなどのウエアラブル機器が急速に普及、これらのデバイスにはGPSに代表される衛星測位システムが搭載されており、デバイスの位置情報を知ることが可能です。

 また、カーナビゲーションのみならず、交通機関の運行情報やゲームなど、デバイスの位置情報を用いたサービスが急増しています。

 この測位衛星は第1次産業の中でも利用されています。衛星で位置情報を得られることで、以前なら牧羊犬がやっていた役割を、衛星からのデータを活用し、IT技術で補完することでカバーできるようになっています。

 バーチャルフェンシングでは、特定の場所に留めるだけでなく、有毒な雑草があるゾーンに入らせないようにしたり、牧草が生え変わろうとしているゾーンに立ち入らせないようにするなど、さまざまな用途に活用できます。

 水産業では、潮の流れや渦の形、プランクトンの多さなど、さまざまな要素が漁獲量に影響しますが、ここでも衛星を使った魚群探知機の精度が上がり、これらの要素をしっかり把握できるようになってきます。

 漁業関係者からは、「自分たちは宇宙から魚を獲っている」という声も聞かれるほど、漁業にも衛星が活用されています。

 このように、打ち上げコストの低価格化や小型衛星のコンステレーションによる時間分解能の向上、データアナリティクス技術の進化で、小型衛星を含む衛星データの第1次産業への利用が急拡大しています。