宇宙ビジネスを切り拓いた破壊的プレーヤー、イーロン・マスク。2002年「ロケットをつくって、火星に飛ばす」と言い放ち、スペースXを設立。いまや宇宙ビジネスをけん引している。彼は、これまで何をしてきたのか。最終的に何をしようとしているのか? 清水建設宇宙開発室、JAXA出身の宇宙ビジネスコンサルタント・大貫美鈴氏の新刊『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から、内容の一部を特別公開する。

イーロン・マスクが宇宙を「市場」に変えた
「世界最高の起業家」が切り拓いた宇宙ビジネスの可能性

 2002年、私は清水建設を辞めたこの年、アメリカ西海岸で宇宙関連のカンファレンスに参加していました。そのときの衝撃を、今もよく覚えています。

 カンファレンスには、たくさんの登壇者がいたのですが、その中に一人、初めて見る人がいました。その人の名前は初めて聞く名前でした。オンライン決済システムのペイパルの共同創業者で、株式を売却して宇宙ビジネスに参入したということでした。

 壇上に上がって話を始めたときの最初の印象は、声が柔らかくて、穏やかな青年だなというものでした。会場はなぜか静かで、緊張した空気が漂っているようにも感じました。そして、発表が進んでいくと、耳を疑う発言に驚くことになります。

「ロケットをつくって、火星に飛ばします」

 IT業界の人がロケットをつくる!? ニュータイプの“ビッグマウス”が現れたのかと思いました。ただ、たくさんの登壇者の中で、なぜかとても存在感があって強烈に私の記憶に残りました。

 この人物こそ、イーロン・マスクです。ちょうどこの年、彼はスペースXという会社を立ち上げて、宇宙ビジネスに参入しました。

 ペイパルの株式を売ったお金では、電気自動車のテスラ・モーターズ、太陽光エネルギー事業のソーラーシティも設立。“世界最高の起業家”の一人と謳われ、アメリカで、いや世界でも有名な経営者になっていくのは、それからしばらく経ってからのことです。

 1971年に南アフリカで生まれたイーロン・マスクには、2つの野望があるようです。

 ひとつは、地球環境を守るための持続可能な新エネルギーを実現すること。そしてもうひとつが、人類の新しい環境となる宇宙への移住です。その行く先は「火星だ」と彼は明言しています。

 日本では電気自動車のテスラを率いていることでよく知られているようですが、アメリカでは、宇宙ビジネスの最前線にいる破壊的プレーヤーとしてもよく知られています。テスラによって、世界の自動車業界を変えた男と呼ばれていますが、実は宇宙ビジネス業界をも変えてしまった一人なのです。

 実際、彼が2002年に立ち上げたスペースXは、わずかな期間でロケット「ファルコン1」を開発し、2006年には初打ち上げ、2008年には打ち上げに成功します。その後「ファルコン9」や現在、世界一の巨大ロケットである「ファルコンヘビー」を開発。

 宇宙輸送を手がけるロケット市場に打って出たのです。

ファルコン9(左)、ファルコンヘビー(右) ©SPACEX