アマゾンvsヴァージン
まったく異なる設計思想
アマゾン傘下の宇宙企業ブルーオリジンは、垂直型のサブオービタル機ニュー・シェパードを開発しています。ニュー・シェパードは6人乗りカプセルがロケットブースターの先端に搭載されています。
垂直に打ち上がって、カプセルは切り離されて弾道飛行で地上100キロを超える宇宙に到達した後、カプセルはパラシュートで帰還、ロケットブースターは再着火して垂直に地上に戻って回収されます。
2015年11月以降、同じ機体の再利用で5回の宇宙飛行実験に成功し、試験機は役目を終えました。5回目は、いろいろな失敗を想定した失敗シーケンスにしましたが、これも成功しています。
2017年11月に、クルーカプセル2.0による初の商業飛行で12の宇宙実験を実施しました。これは宇宙旅行のための試験飛行でもあり、マネキン「スカイウォーカー」を搭乗して帰還することに成功しています。ブルーオリジンでは2018年にニュー・シェパードの商業運航で宇宙旅行を始める計画です。
出典:http://www.virgingalactic.com/
出典:https://www.blueorigin.com/gallery
スペースシップツーとニュー・シェパード、機体の形状は有翼型とカプセル型、飛行形態は空中発射型と垂直型、推進系はハイブリッドと液体燃料と、まったく異なるタイプのサブオービタル機です。
そして、スペースシップツーはフライトコンピューターを搭載していない手動型でパイロット二人が搭乗します。一方、ニュー・シェパードはコンピューター搭載の遠隔操作で無人で飛行します。
ニュー・シェパードは全自動で、パイロットが運転するという設計思想はありません。無人で動かすことを考え、プログラミングされており、実用的にできています。宇宙旅行機の開発にこだわっているジェフ・ベゾスは、宇宙旅行こそがゲームチェンジャーになるとの信念で進めていますが、こんなところにもIT流が感じられます。
オービタル旅行では、これまでのべ約550人の宇宙飛行士が宇宙に行っています。サブオービタル機の商業運航が始まれば、さらに多くの人々が宇宙空間に旅に出ることになるでしょう。
(この原稿は書籍『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)