低・中所得者層向け住宅展示会で
「こんなところに住めるわけがない」

 中国では度を超した住宅価格の値上がりが深刻な格差問題を生んでいる。

 格差の底辺に追いやられた国民が「一生持ち家に住めない」という怨念を強める中で、低所得者への住宅供給がひとつの大きな政策的課題となっている。

 中国の世相を反映するキーワードに「保障性住宅の普及」がある。これは、中国政府が低・中所得者層向けに提供する住宅で、この政策が国家的課題である「国民生活改善」の代名詞にもなっている。

 この「保障性住宅」には、「廉租房(安価な賃貸住宅)」「経済適用房(安価な分譲住宅)」「配套商品房(立ち退きの受け皿となる住宅)」「公共租賃房(外省からの若い労働力を主な対象とした賃貸住宅)」がある。

上海市内の保障性住宅(経済適用房)。本当に必要な需要層にとっては“高嶺の花”!?
Photo by Konatsu Himeda

 住宅価格が高騰した上海では、安価な分譲住宅である「経済適用房」の普及が課題となっている。現地ではあたかも急ピッチで建設が進行しているかのような報道が目に付くが、一部の上海市民はこれを冷ややかに受け止める。

 筆者は昨年、上海で開催された不動産展示会を訪れた。現地メディアは保障性住宅を展示会の目玉として取り上げたが、展示コーナーに参観者の影はほとんどいない。幸い、初老の女性がひとり、展示コーナーに掲げられた上海市奉賢区の物件紹介を眺めていたので話しかけてみた。すると、こんな回答が返ってきた。

「こんなところに住めるわけがない」