モチベーションファクターに沿った
解決策が満足度を高めた

 これを可能にしたのは、マリナーズが、イチローのモチベーションファクター(意欲が高まる要素。詳しくは過去記事「中国人ビジネスマン、実は草食系多し!?見た目と違う驚きの実態」を参照)に沿ったソリューションを見いだし、本人を満足させたからだ。

 報道をもとにした私の推測だが、イチローのモチベーションファクターは、「少なくとも50歳まで現役を続ける」という、誰も成し遂げたことのない目標を「野球の研究者として」ひたすら極めていくという「自律裁量」にあるように思える。「マリナーズから言われれば断れない」と発言するなど、頼りにされたら嫌とは言えない面もある。これも「自律裁量」型の典型だ。

「クリーンナップを打てなくなったら潔く引退する」「メジャーリーグでベンチ入りできなかったら引退する」といった、名誉を重んじるような「地位権限」には、イチローのようなタイプはあまり固執しないだろう。

 また、マリナーズにとどまるより、日本のプロ野球に復帰することの方が、より高い契約金額を得られたかもしれないが、そうしなかったのは、イチローのモチベーションファクターがもはや、経済的な「目標達成」にはないことを示している。家庭を大事にする「公私調和」や、安定的に生活を営む「安定保障」のモチベーションファクターはすでに満たされているのだろう。

 恐らくマリナーズは、イチローの胸の内を分析し尽くして、自律裁量こそが彼のモチベーションの源泉だと見抜いたのだろう。大金にも名誉にも興味を持たないイチローが唯一こだわっている「50歳まで現役を続けて野球をやり続ける」という目標を実現するには、たとえ、メジャーリーグの出場選手登録はできず、試合に出場できなくても、選手と練習したり、現場でサポートしたりすることで、イチローの希望をかなえようという点に行き着いたことが、イチローの満足度を高めたことは想像に難くない。