第25回大手銀行グループに属さず、信託専業を貫いてきた住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスが、2011年春をメドに経営統合することで大筋、合意に達した。これまでに何度も統合話が浮上しながら実現しなかったにもかかわらず、このタイミングでの合意は驚きをもって受け止められている。
住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスの統合交渉が表面化した10月27日から翌28日にかけて、両グループの首脳は事実関係を報告するため金融庁に足を運んだ。
担当者レベルにはニュアンスこそ伝えていた様子だが、正式には1週間あまり先に報告、その後発表する手はずになっていたからだ。
そのため対外的には、「なにも決まっていない」とのコメントを発表するしかなかった。事実、統合形態などは決まっていたものの、まさに最終的な詰めの作業を進めている最中だったからだ。
しかし、交渉が明らかになったからには、監督官庁である金融庁になにをおいてでも報告しなければならない。そこであわてて馳せ参じたというわけだ。
こうしたあわただしい対応に追われたのは、実質的な交渉のスタートからわずかしか時間がなかったからだ。
経営統合に関して話し合うため、両グループの首脳が初めて顔を合わせたのが今年6月頃。交渉を本格化させたのは8月からで、これまでに3~4回、差しで議論を重ねた模様だ。
結果、2011年春をメドに経営統合することで大筋、合意したのはつい最近で、わずか2ヵ月のスピード合意だったというわけだ。
現時点でまとまっている有力な統合案は、住友信託が中央三井と株式を交換して、持ち株会社の「三井住友トラスト・ホールディングス(仮称)」を新設。傘下に住友信託と中央三井傘下の中央三井アセット信託銀行と中央三井信託銀行をぶら下げる。
その後、1年程度をかけて傘下銀行を合併させ、住友信託を存続会社とする、「三井住友信託銀行(仮称)」を立ち上げる計画だ。
信託業界2位の住友信託と、4位の中央三井が統合することで、規模で信託トップに躍り出るばかりか、銀行グループで見ても5位のメガ信託の誕生となる(表参照)。
主導権めぐる10年来の攻防
住友信託と中央三井をめぐっては、10年ほど前からたびたび統合話が浮かんでは消えてきた過去がある。
統合が最も現実味を帯びたのは04年、経営危機に陥った旧UFJホールディングス(現三菱UFJフィナンシャル・グループ)の旧UFJ信託銀行争奪戦だった。