「アメリカファースト」のトランプ大統領は
既に「ディール(取引)」を終えている

 トランプ大統領にとって、「朝鮮半島の完全な非核化」や「北東アジアの紛争回避」など、実はどうでもいいことなのではないだろうか。そもそも、トランプ政権が「北朝鮮の核・ミサイル開発問題」に介入し始めたのは、北朝鮮が米国を直接核攻撃できる大陸間弾道弾(ICBM)を持つ可能性が出たからだった(本連載第155回)。

 トランプ大統領は、口を開けば「朝鮮半島の完全な非核化」、「拉致問題を解決する」などといろいろ言ってはいるが、実は自国の安全保障のことしか考えていない。北朝鮮が核実験場を爆破して、核弾頭を搭載したICBMを開発できないということを確認した、まさにその日に首脳会談中止を表明したのは、そのことを象徴的に示している。

 首脳会談を流すという、既存の政治家には絶対にできない「挑発」は、いかにもトランプ大統領らしい。だが、1つ言えることは、大統領にとって、「完全な非核化」など、所詮「オマケ」に過ぎないということだ。やはり、大統領の行動は、あくまで「アメリカファースト」なのだと、あらためて示したといえる(第170回)。

トランプにとって「完全な非核化」以外に
会談実施の意味はない

 トランプ大統領にとって、米朝首脳会談とはどういう意味を持つのか、もう少し考えてみる必要がある。まず、金委員長が「ICBMの実験中止」を表明し、「核実験場」を爆破したことの持つ意味である。

 端的にいえば、北朝鮮が「米国を直接攻撃できる」懸念が消えたことを意味するだろう。つまり、米朝首脳会談の開催前にして、トランプ大統領が本当に欲しいものは、既に手に入ってしまったことになる。

 その上、北朝鮮に拘束されていた米国人3人も取り戻し、米国世論にアピールできるオマケも得た。「朝鮮半島の非核化の実現」とは、それができれば「ノーベル平和賞」級の偉大な成果となり、そういう意味での関心はあるだろう。だが、「アメリカファースト」の大統領の本音としては、実現してもしなくても、どちらでもいいこととなる。

 一方、この連載で指摘したように、「朝鮮半島の完全な非核化」の実現が「在韓米軍の撤退」を意味することは想定される。だが、これは米国の長期的方針としては既に決定していることであり、その実行のタイミングだけの問題である(第180回・p5)。そういう意味では、トランプ大統領が是が非でも米朝首脳会談をやりたいという動機付けにはなるものではない。