閉塞感を打ち破れない
企業が陥る「2つの壁」
なぜ日本企業は苦戦し、長い閉塞感を打破できないのでしょうか。
イノベーションについて語る前に、一般的に長期間にわたり問題解決ができない場合、以下の2つのどちらかの状態に陥っていると考えられます。また、非常にやっかいな問題として、この状態に陥ったことに気がついていないことが多いのです。
(1)必要な対策自体が見えていない
問題があり苦戦していることは理解しながら「問題解決につながる対策」自体が見えていないケースです。この状態では、問題解決への積極的な行動を取ることができず、精神的な混乱の中で過去続けてきたことを惰性で続けることが多いのではないでしょうか(そして、次第に問題がないかのように振る舞い始めます)。
このような組織など存在するのかと思う人もいるかもしれませんが、問題があると理解しても対策を考案できないことで、危機から目を背けて「昨日と同じ今日」を維持しながら誤魔化している組織は少なくありません。
大東亜戦争後期、劣勢を打破する方策を発見できない日本軍内では、些末な事務的事項の正確性に、極端に固執する将校が増えていたと言われています。本当の問題から目を背ける歪んだ心理が働いていたのでしょう。
(2)対策として追いかけているものが「実は間違っている」
今直面している問題に対して、企業・組織として取るべき対策の方針が既に決まり、その実現に向けて活動していたとします。けれど、継続して問題が解決されない場合、その集団が想定している解決策自体が誤っていると判断すべきでしょう。
努力を続けて結果が出なければ、その努力は問題解決の鍵ではないことになります。風邪をひいているのに、胃腸薬を飲んでも治ることはなく、あなたが風邪だと思い込んで風邪薬を飲んでも、本当は別の病気であったなら、風邪薬を飲み続けても体調は改善しません。
間違った努力を続けて疲弊するのではなく、正しい努力が必要なのです。第1回の記事でご紹介した、問題自体が誤っている可能性を考える「ダブル・ループ学習」が必要な所以です。
以上の2つのどちらの状態であっても、組織は直面している問題を解決することができません。この状態のままであれば、時間の経過と共に問題はますます悪化していくだけでしょう。