日大アメフト事件は、広報の「目的」に誤りがある

──なんだかどこかの大学のアメフト部の会見と似ていますね。

森岡 そうです。多くの人があの問題に興味を持つのは、あれが単なるスポーツの問題ではなく、いまの日本の組織の縮図となっていると感じるからです。どこかでみんな思い当たる「組織における閉塞感」があるからではないでしょうか。なぜ日大は会見をやればやるほど泥沼にハマって行くのか?奇跡的に最悪の手を重ねていくのか?マーケティング的な見地からすれば、あれは会見の目的が間違っているのです。広報の目的が「偉い人を守る」ことになってしまって、「日大のブランドを守る」ことになっていない。広報部員は、大学に勤めているのではなく、権力者に仕えているという意識なのでしょう。だから会見をやればやるほどボロが出て、大学のブランドは毀損されてしまう。あれも実は組織の問題なんですね。

──森岡さんが広報ならどういう対応をしますか?

森岡 来年の受験生を減らさないためには、「大学のブランドを守る」ことを目的とするべきです。その場合、スピードが最重要です。確かに当事者はそんな簡単に真実を語らないでしょう。しかし情報を出さないことが、世間のネガティブな感情をどれだけ煽るかを考えなくてはいけない。事件が発覚したらすぐに責任者が出て行って、起こってしまった事実に対して頭を下げ、謝罪し尽くすことです。それだけで世間の反応はかなり違ってきます。真相は後の調査で明らかにすればいい。USJでもかつて世間からバッシングを受ける事件があったので、そのときの経験が蓄積されています。何か起これば迅速に対応できます。日大広報部にはそういう蓄積がなかったのでしょう。危機管理に対して平時からトレーニングをしておくことは重要です。

出世する人は必ず「組織構築スキル」を持っている

──組織の問題が重要とはいえ、それは社長や人事が考えることだと思っている人が多いのではないでしょうか?

森岡 私はUSJに入ったときも、すぐに組織改革に取り組みました。いくらマーケティングだけががんばって戦略を練っても、それが全ての現場に届かなければ機能しないと思ったからです。もともと私はプロマーケターとして雇われたので、遠くない将来にいなくなることはわかっていた。だから私がいなくなっても動き続ける持続可能な組織にしなければ意味がないとも思っていました。マーケティング部だけがよくても、マーケティングができる組織にはならないのです。なぜならマーケティング部が作った戦略を実行するのはマーケティング部だけではないからです。開発部も営業部も実行しなければならない。