若手の「出世したくない」症候群が、ただの責任逃れではない理由若手・中堅社員の管理職離れが加速している。それは「責任逃れ」の一言で片づけられない。彼らと会社の価値観には、想像以上に大きなギャップが生まれている。その正体とは何か(写真はイメージです)

強いリーダーになれない
管理職離れも進む若手社員の本音 

 多くの企業でリーダーシップの不在が問題視されています。自らビジョンを示し、未来を切り拓いていくリーダーが生まれてこない、グローバルリーダーが足りないといいます。

 でも、こうした自らの意志で周囲を牽引していく強いリーダーを求めれば求めるほど、社員の不満も不安も募ります。そもそもそんなリーダーが上にいないのに、なぜ自分たちに期待をするのか。そんな強いリーダーになれと言われても、自分がそんなリーダーになれるとも思えない。

 そんな中で、さらに若手、中堅社員の管理職離れが加速しています。「管理職になりたくない」と意思表示する社員が増えているというのです。

 拙著『“誰も管理職になりたくない”時代だからこそ みんなでつなぐリーダーシップ』の中でも紹介しましたが、実際に多くの調査機関が実施したアンケート結果でも、男性の若手・中堅社員では5割前後、女性の若手・中堅社員では8割以上が「管理職になりたくない」と回答しています。

 強いリーダーになることも、管理職になることも、大きな責任と負担を抱えることになる。上に立って周囲を動かしていくといっても、実際には自分の裁量で決められることはあまりない。むしろ組織の論理に振り回され、見返りも保証もなく、成果と責任ばかりを問われ続ける――。こんな現実を見て、若手・中堅社員の管理職離れが進んできているのです。

 管理職やリーダーになるのが当たり前だといわれてきた世代からすると、負担や責任から逃げているだけのように聞こえるかもしれません。でも、実際に彼らが管理職やリーダーになりたくない本当の理由を聞いていくと、彼らが抱いているリーダー像や管理職像と現実との間に大きなギャップが生まれてきていることがわかります。