OPEC(石油輸出国機構)と非OPEC産油国の閣僚会合が6月22~23日に開催される。これら産油国は、日量約180万バレルの協調減産を続けている。協調減産は、当初、2017年1~6月の予定で始まったが、2度の延長が決議され、現在は18年末までとなっている。
今回の会合では、すでに決定している18年末までの減産継続を確認するとの見方が大勢であったが、ここにきて、減産の緩和を求める声が急浮上している。
原因の一つがベネズエラの減産である。同国では経済危機が深刻化し、人材流出や資金不足から国営石油会社PDVSAの経営も混乱して原油生産は減少している。2年前に日量200万バレル程度あった産油量は足元では同140万バレル弱まで落ち込んでいる。
ベネズエラでは、5月20日に大統領選挙が行われ、反米左派のマドゥロ大統領が再選された。米国では、トランプ大統領が、ベネズエラ政府などによる国有財産の売却を制限する大統領令に署名し、制裁を強化した。このため、ベネズエラの原油生産が一段と落ち込むとの懸念が強まった。
一方、米国によるイラン制裁も今後の原油需給の引き締め要因だ。5月8日には、トランプ大統領がイラン核合意から離脱し、対イラン制裁を再開することを表明した。石油関連取引が制裁の対象になるまでの猶予期間は11月4日まで180日間設けられており、また、現状では、英仏独が従来の核合意を継続する姿勢を示すなど、米国による新たな制裁がどれほど実効性を伴うのか不透明感があるものの、徐々にイラン産原油の取引環境が悪化し、かつてのように原油輸出が日量100万バレル程度まで落ち込む可能性もある。
また、5月21日にポンペオ米国務長官は、イランが核開発の完全な放棄やシリア内戦からの撤退など米国の要求を受け入れない場合は、史上最強の制裁を導入する可能性があると述べた。
こうした状況下、産油国サイドでは、このまま減産を続けた場合、過度に原油相場が上昇して、原油需要を抑制してしまうことなどが懸念されるようになっている。
ブレント原油が1バレル当たり80ドルを超えた5月17日には、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相が世界経済の成長を支援するために、他の産油国と共に確実に十分な原油を供給すると述べた。
25日には、サウジアラビアとロシアが減産の緩和をめぐって協議したと報道された。
急な原油相場の上昇には、原油の消費国のみならず、産油国でも警戒感が生じている。OPEC総会では、減産の緩和が決定される可能性が高まっている。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)