国民の関心は籠池夫妻の逮捕よりも、背任罪で告発状が出され、関心も高い国有地取引の真相解明にあった。だが検察は当初から、財務省の背任と公文書改ざん疑惑の立件は、スジが悪いとして捜査に消極的だったのが真相だ。

 問題の土地には、ゴミが大量に埋められていた。近畿財務局との売却交渉の途中でそれに気付いた籠池氏側は「だまされた」と厳しく抗議し、弱みを突かれた財務局職員は、ゴミの撤去は学園側が行うこととし、その撤去費を差し引いた額で売却に応じることにした。

 航空局はゴミの埋設調査をし、撤去費を6億7000万円と算定した。当初の売却予定額からそれを差し引いた2億8000万円の支払いを学園から受け、後日、学園から瑕疵担保責任による損害賠償を求められたら、仮にその額が売却額より大きくなっても、予算措置を講じて学園側に支払うのが、通常の行政ルールだった。

 ところが、財務局の職員は、上司に相談することなく、航空局職員と謀って、ゴミの撤去費を8億2000万円に修正し、瑕疵担保責任を問わないことを条件に売却価格を1億5000万円減額して学園側に売っていた。

 瑕疵担保責任による賠償額は2億8000万円以上になるとの見方もあり、結果としてこの取引で国が損害を受けたと判断するのは困難だった。それが検察の背任立件を慎重にさせてきた理由だった。しかし、航空局と示し合わせて撤去費を事実上修正し、それが露見しないよう森友学園側と口裏合わせするなど手口は悪質だった。

 捜査現場は、担当者だけでも起訴できないか、容疑をもう一度見直そう、との機運が一時高まったとされる。

財務省の二重構造、キャリア隠しの
「スケープゴート」非難を危惧

 だが財務省幹部の背任を立件するのは壁があった。

 イレギュラーな取引が行われた背景には、国有財産の管理や処分をめぐる財務省の特殊な事情があった。

 財務省OB官僚によると、財務省理財局は、財政投融資と国有財産を扱うが、国家の財政政策を担う財投部門はエリートのキャリア官僚が担当し、国有財産の処分の仕事は、ベテラン官僚が担当する、という二重構造になっていたという。

 国有財産処分は、時には、暴力団との関係を疑われるような業者とも渡り合わねばならないこともあるという。キャリア官僚を傷つけないため、そういう面倒な仕事はベテランに担当させてきた。そういう仕事に長けたベテランは、その部署に長くとどまることになり、職場環境と仕事の中身が閉鎖的になる。

 検察もそういう事情は承知していた。ベテラン職員だけを起訴すれば、キャリア官僚をかばって、現場職員をスケープゴートにした、として非難されかねないとの危惧もあり、結局、検察は「国が損害を受けたと判断するのは困難」として、背任で告発された財務局、航空局の現場職員ら8人を嫌疑不十分に、4人を嫌疑なしで不起訴とした。