『週刊ダイヤモンド』6月9日号の第1特集は「最凶官庁 財務省の末路」です。国家の予算編成権と税金の徴収権をその手に握り、「最強官庁」の名をほしいままにしてきた財務省。その組織が決裁文書の改ざんという前代未聞の不祥事を引き起こしました。信用失墜の底なし沼にはまり、「オオカミ少年」と化した財務省ですが、その背景を探っていくと、省庁再編や接待汚職問題、政治主導による首相官邸への権限集中によって、その権勢を削がれ続け弱体化してきた悲しい現実が見えてきます。組織が落ちぶれていく過程で、官僚としての矜持やあるべき姿を見失っていったのかもしれません。果たして、財務省は自浄作用を発揮し、かつての輝きを取り戻すことができるのか。現役財務官僚や事務次官をはじめとしたOBの証言を基に、その実像に迫りました。
最強官庁・財務省は
なぜ稚拙な取引をしたのか

決裁文書の改ざんと、交渉記録の意図的な廃棄・隠ぺいにまで追い込まれた森友学園との国有地の取引。文書による後の検証に耐えられないような稚拙な取引を、最強官庁の財務省と近畿財務局は、なぜしてしまったのか。
国会では、8億1974万円とした地中のごみ撤去費の算定根拠など、売却に向けた手続きの過程に関心と質問が集中しているが、それは取引の主導権をすでに森友側に握られた後の出来事だ。
国会に提出されたこれまでの文書を眺めると、むしろ取引の大きなターニングポイントは、主導権が森友側に移る以前、売却の前段階となる「貸し付け」までの過程にあることが見えてくる。
財務省として“一線を越える”腹を決めたとみられるのが、2015年4月14日。この日、近畿財務局は森友側に土地の貸付料について、「下がる見込み」と電話で伝えている。