泣く赤ちゃんに「出ていけ」と、
冗談のネタにしたトランプ大統領

 次にジョークの面白さに定評はあるものの、誰からも知的とは言われないトランプ大統領の冗談も分析してみましょう。トランプ大統領の候補者時代、選挙活動時の演説の最中に、聴衆席にいた赤ちゃんが泣き出すという場面がありました。その時にトランプ大統領は、「気にしないでいいよ。私は赤ちゃんが大好きだ。赤ちゃんは泣くものだ」と声をかけました。

 これを聞いた観客が、「トランプも意外と優しいんだな!」という印象を持ち始めた瞬間です。トランプ大統領は再び口を開き、「冗談だよ!」と言ったのです。そして、トランプ大統領は、「実を言うと、赤ちゃんに泣かれながらしゃべるのが好きではない。赤ちゃんを外へ連れ出してもらっていいかな」と続けたのです。

 会場では、この冗談で笑いが起きていたようです。しかし、トランプ大統領は、この冗談のせいで、マスコミから「赤ちゃんまで攻撃した!」と大バッシングされました。

 このトランプ大統領のジョークは同じ毒舌でも、オバマ前大統領の冗談とは違って、どうして知的に見えないのでしょうか。

 それは、この冗談を言うのに必要な要素が、「言いにくい事を言う勇気」のみだからです。どう見ても、この冗談には独自の視点があるわけでもないし、時事問題を把握しなければならない要素もありません。

 とはいえ、こういう冗談はオバマ前大統領の知的な冗談よりも声を出して笑う人が多いのも事実です。実際、この赤ちゃんジョークはトランプ氏の鉄板ネタです。大統領になる10年以上前に、私がトランプ氏の講演を聞きに行った時も、同じジョークを言って会場の人々を笑わせていました。

 実は、ビジネスマンは偉くなりすぎると誰からも怒られなくなるので、「言いにくい事を言っただけの冗談」を言いがちです。トランプ大統領も、その1人なのではないでしょうか。しかし、知的なユーモアのほうが、ビジネスマンには断然得なことが多いです。