日本でもスタートしたワークフェア政策
ハローワークを巡る国と自治体の対立

 日本で、ワークフェアの政策は積極的に導入されていませんが、いくつか動きが出てきました。

 まず、ハローワークの地方移譲問題です。日本ではハローワークなど職業紹介を国、地域レベルの雇用政策や産業政策は都道府県、生活保護費の支給を市町村といった形で、実施主体が長らくバラバラでした。

 そこで全国知事会は、「就職相談から職業紹介まで一貫した支援が可能になる」とし、ハローワークの地方移譲を主張し、厚生労働省が「国際条約では『国の機関の指揮監督の下で職業安定機関の全国的体系』を求めている」と反対する構図が、数年続きました。

 結局、国のハローワークとは別に、自治体が無料で職業紹介を行う「地方版ハローワーク」を可能にする法改正がなされるなど、雇用と福祉の連携を地域レベルで図りやすい体制が整備されつつあります。

 さらに、ワークフェアの概念を含む制度として、「生活困窮者自立支援法」が2015年4月からスタートしました。これは生活保護に至っていない生活困窮者に対する「第2のセーフティーネット」を拡充するという目的の下、住宅支援や就労準備の支援、家計管理、子どもの学習支援などを進めるとしています。

 その就労支援の1つとして、ダニエルが受けたのと同じような「履歴書の作成指導」も含まれており、福祉と雇用の連携が意識されていることは間違いないでしょう。

『めし』のセリフ通り、雇用政策は収入減を失った人を「ヤケ」にさせないセーフティーネットですし、雇用と福祉をリンクさせるワークフェアは本人にとっても、費用を負担する国民全体にとっても大事な考え方だと思いますし、ハローワークの地方移譲や生活困窮者自立支援法の枠組みもよい試みだと思います。

 しかし、多くの行政機関や関係者が絡むほど、無責任体制が生み出され、ダニエルを苦しめたたらい回しが起きるリスクが付きまといます。ワークフェアを進める場合、できるだけ個人の事情に配慮しつつ、行政や専門職が十分に連携を取る必要があります。『わたしは、ダニエル・ブレイク』の描写は、その留意点を示しているといえるでしょう。