「今までいろいろなチームを率いてきたが、本物のキャプテンと呼べるのはパオロ・マルディーニとお前だけだ」

 パオロ・マルディーニとはACミランひと筋で四半世紀プレーし、イタリア代表としても4大会連続でワールドカップに出場。1998年のフランス、2002年の日韓共催両大会でキャプテンを務めた、イタリアサッカー界を代表するレジェンドの一人だ。

 歴史に残る名選手と同等の評価を受けた長谷部の神髄を見た、という思いに駆られたのは2014年の年末だった。ブラジル大会後にザッケローニ監督からバトンを引き継いだメキシコ人のハビエル・アギーレ監督も、迷うことなく長谷部をキャプテンに指名した。

 そして、連覇がかかるアジアカップの開幕が目前に迫ってきた時期に、スペインのサラゴサで指揮を執っていた時に八百長に関与した疑いがアギーレ監督に持ち上がった。アジアカップへ向けた国内合宿がスタートした12月29日。千葉県内のホテルで、アギーレ監督から選手たちに説明があった。

 もちろんアギーレ監督は関与を否定した。しかし、「八百長」という言葉が持つ独特の重さが、チームの内外の至るところに微妙な影を落とす。それらをたった一言で吹き飛ばしたのが、初日の練習後にメディアの前で対応した長谷部だった。

「これからは自分たちのアギーレ監督を信頼する力が試されていく」

 残念ながらチームは準々決勝で、UAE(アラブ首長国連邦)代表にPK戦の末に敗退。地元の検察に起訴されたことを受けて、2015年2月に入ってアギーレ監督も解任された。そして、急きょ就任したヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、長谷部を「代役の利かない存在」とすぐに位置づけた。

 地位が人を作る、とよく言われる。当初はぎこちなさを感じていた長谷部も、時間の経過とともにキャプテンという肩書きに、自らの立ち居振る舞いを追いつかせたと明かしている。ロシア大会出場を決めた昨年8月のオーストラリア代表とのアジア最終予選後には、こんな言葉を残している。

「プレッシャーは年々大きくなっていますね。キャプテンとしてアジア予選を戦う中で、前回の2014年大会の時は任されてそれほど時間が経っていない中で、本当に手探り状態の中でやっていました。今回に関しては自分に対してできるだけ責任というか、プレッシャーをかけながらやってきました。その意味では、喜びはより大きいですね。一人でサッカーをするわけではないので、プレッシャーのことはなかなか言いづらいんですけど、チームがいい形で試合に入れるように、雰囲気や監督とのコミュニケーションなど、さまざまな部分で自分ができることを常に考えてきたつもりです」