交渉に関して言えば、CVIDではなく「朝鮮半島の完全な非核化」という文言にとどめた金正恩側の“勝利”だったという見方が主流のようである。

 冒頭で中国の最高指導者による最新のコメントを引用したが、中国共産党指導部は今回の米朝首脳会談をどのように観察・評価し、かつ今後の動向をどのように見積もっているのであろうか。

 本稿では以下このテーマを「全体的評価」、「戦略的考慮」、「内政的要素」という3つの視角から検証していきたい。

中国共産党指導部は
米朝首脳会談を歓迎している

 まず1つ目であるが、習近平によるコメントにもあるように、共産党指導部としては全体的に今回の会談を前向きに評価し、歓迎していると言える。

 このような感想を保持し、立場を表明する最大の動機の1つはやはり「“第2次朝鮮戦争”が回避されたこと、あるいは少なくとも回避される方向に向かっていること」であろう。

「中華民族の偉大なる復興」と定義された“中国夢”というスローガンの下、改革開放・現代化建設を推し進めている中国としては、北朝鮮問題が引き金となって、自国の国境付近で再び米国と一戦を交えることのダメージは計り知れない。党・政府の官僚や体制内研究者はしばしば口にする。

「中国にとって対外開放とは、まずは対米開放であり、対米関係とは中国現代化建設のプロセスにおける最大の外部要素である」

 そんな米国と武力衝突に陥ることの経済的、外交的、軍事的、そして政治的ダメージを涼しい顔をして吸収できるほどの国力を中国は持ち合わせていないし、“米国に戦争で勝利すること”を通じて中国の国際的影響力を一気に向上させようなどともくろむ余裕は、少なくとも現段階ではないであろう。

 もう1つの動機としては、北朝鮮の体制や核を巡る動向とインパクトに帰する。北朝鮮が核武装し米国や韓国、そして中国との関係を悪化させ外交的に孤立していく中で、国内の経済情勢が悪化し、その過程で、あるいは結果的に極度の混乱、“崩壊”を彷彿とさせるような状況に陥り、中朝国境の中国側に大量の“難民”が流れ込んできたり(実際にこのような状況に対処するための政治的・物理的な準備を中国は進めてきていた)、核の放射能が漏洩してくるような事態になれば、中国国内では社会不安が蔓延し、“国家安全保障”をも脅かしかねない。