専業業者の専売商品と見られてきた投資用ワンルームマンション事業に大手が続々と参入している。

 昨年9月、野村不動産アーバンネットは業績が悪化したマンションディベロッパーから、ワンルームマンションを2棟安値で買い取り、個人投資家向けにあっという間に売り切って業界の話題をさらった。この12月には三井不動産が全50戸1Kの「パークリュクス白金mono」を発売する。ほかにも東急不動産、オリックス不動産、大京など、事業化を検討している企業は多い。

「投資用ワンルームマンションブーム」の背景には、リーマンショックで、金融資産の大損害を被った投資家が、少なくとも物件は手元に残り、そこそこの利回りで運用できるマンション投資に殺到しているという事情がある。金融機関などが開催する投資用マンションのセミナーは「いつも満員御礼の状況」(セミナー主催者)だ。

 これまで、投資用ワンルームマンションは専業業者の強引な電話営業などでイメージは悪かった。だが、ブランド力のある大手なら顧客の安心感も担保できる。

 「表面利回り5%台で運用できる」(三井不動産)と、専業業者の提示する利回りよりは低いが、物件も都心一等地で居住用にもできるスペックの高いものが多い。

 「大手は、単価の高いファミリー物件向けに都心の1等地で仕入れた土地を多く抱えるが、このご時世都心の高い物件はすぐには売れない。価格が安く手離れもいいワンルームマンションにすれば、投資回収のスピードも速まる」(業界関係者)という事情もある。

 もっとも、ワンルームマンションのマイナスイメージを気にしてか、これらの大手は「投資目的ではなくあくまでも居住用」とする。寒い市況のなかの数少ない熱い商品に、各社が“こっそり”殺到している状況だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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