民泊を巡る2つの大混乱
本当に仲介サイトの責任か
前回の連載記事で、政府は成長戦略で第4次産業革命を強調するわりにはシェアリングエコノミーの普及に及び腰であることを、カーシェアリングを例に指摘しました。図らずもこの数週間の民泊を巡る騒ぎから、及び腰どころか政治と行政がともにその足を引っ張り合っていることまでが、明らかになってしまいました。
多くのメディアで報道されているように、6月に入ってから日本での民泊ビジネスは大混乱となりました。混乱の原因としては2つの事象があります。それぞれについて経緯を簡単に振り返ってみましょう。
1つ目は、民泊仲介サイトの物件リストからの違法な民泊施設の削除です。民泊のルールを定めるべく新たに制定された民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行日が6月15日だったので、観光庁は民泊仲介サイトに対して、法に基づく届出を行なっていない物件(=違法物件)を物件リストから削除して紹介しないよう求めてきました。
これを受け、たとえば民泊仲介サイト最大手のエアビーアンドビー(Airbnb)は6月に入り、今春6万2000件あった掲載物件のうち4万件以上の表示を止めました。
2つ目は、新法の施行日より前にすでに成立していた予約の扱いです。観光庁は6月1日付の課長名の通知で民泊仲介サイトに対し、6月15日以前の段階で違法物件を対象に成立した宿泊予約について、以下のことを求めて来ました。
・6月15日以降に宿泊する予約については、予約の取り消しか合法物件への予約変更を行うこと。
・6月15日以前に宿泊する予約についても、対象の違法物件が法に基づく届出を行う予定がない場合は、違法物件の所有者に対して予約の取り消しか合法物件への予約の変更を推奨すること。
この通達を受け、たとえばエアビーアンドビーは6月7日に違法物件への6月15日~19日分の予約をキャンセルし、6月19日分以降の予約も10日前に自動でキャンセルとなるようにしました。ちなみに、エアビーアンドビーが6月7日以前の段階ですでに受け付けていた予約は6月15~30日分だけで4万件あり、そのうち3万件超の予約がキャンセルとなる恐れがあるそうです。