『週刊ダイヤモンド』6月30日号の第一特集は「必修 使える!数学」です。「数学」という言葉を聞くだけで、嫌になる人も多いかもしれません。ですが、AI(人工知能)や仮想通貨、自動運転とはじめとする、未来を変える技術の根幹は数学の塊。未来を先取りしたい企業たちが、数学の世界にどっと押し寄せてきています。
トヨタ、NECが難題解決で頼った
イノベーションを生む数学

6月18日、仙台市の東北大学材料科学高等研究所。日米から選ばれた10人の学生・大学院生たちに、二つの課題が提示された。
「次世代エネルギーとモビリティプラットフォームのデザイン」
「産業用IoT(モノのインターネット)向けの信頼性の高い無線ネットワークシステムの構築」
まるで未来の社会の姿を占うようなテーマで、どう手を付けていいのかさえ悩む難問だろう。この難題を解決してもらおうと、数学を扱う若き才能に頼ったのはトヨタ自動車とNECである。
この日始まったのは、学生が数学を使って企業が出した課題に取り組む教育プログラム「GRIPS-仙台」だ。参加者たちは二つのグループに分かれ、今後約2ヵ月間にわたって集中的に課題に向き合う。学生側の負担は時間だけ。企業は課題を解いてもらう代わりに、滞在費などを支援する。
GRIPSの元となったRIPSは、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の純粋応用数学研究所(IPAM)が17年前に始めたプログラムだ。
米国でこれまで参加したスポンサーは、グーグルやIBM、ツイッター、ウォルト・ディズニー・カンパニーといった大企業や、ロスアラモス研究所、米空軍研究所、ロサンゼルス市警察など一流ぞろい。過去には人工衛星の最適な配置や、警察官と職務質問した相手との会話が激しさを増すタイミングを探る問題が出たという。