シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、『君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。
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好奇心で仕事を道楽にしていた人に学ぼう
我々は、スマホやインターネットがない生活をもはや想像できない。それと同じで、AIがない生活は考えられなくなる時代がそこまできている。
AIは、それだけ深く我々の生活に入り込んでいる。私たちが日々受けとるメールやメッセージ、見ている動画も多くはAIが自動生成したものだ。
そのAIは進化を続け、様々な形でさらに私たちの生活に入り込む。こういう時代にどう生きるべきかが世界中で議論されているが、私にとっては、答えはとっくの昔に出ている。
それは、「仕事の道楽化」である。これはある人の受け売りでもある。
これを説いていたのは、江戸時代に生まれ、昭和の戦後まで生き抜いた明治神宮の森の生みの親、官僚・投資家・教育者だった本多静六氏だ。
本多静六氏が提唱した「職業の道楽化」とは、仕事を楽しみや趣味のように感じることで、人生の最大の幸福を得られるという考え方だ。
本多氏は、富や名誉、贅沢な生活よりも、職業を道楽として楽しむことのほうが幸福であると主張した。幸福であるだけではない。道楽として仕事に打ち込んでいれば、仕事がどんどん上手になる。そして結果も出てくる。
AIが進化し、そこかしこに浸透する今後は、まさに自分の脳が幸福を感じられない指示待ち作業は、全部捨てられるのだ。AIが最後までできないのは、好奇心に基づく探求である。
好奇心とは、自発的であると同時に、脳内に快楽を感じさせるものだ。
逆に言えば、好奇心を発露できる人間は、AIを指示待ちパートナーとして徹底的に活用できる。リーダーとしてAIを率いて、いいコンビになれる。
職業の道楽化とは、働けば働くほど、脳内で幸せホルモンが湧いてきて、嬉々としてさらにゾーンに入って働くという状態だ。
職業を道楽化する3つの方法
職業を道楽化するための方法として、本多氏は以下のように提案している。
①自分の職業を天職と確信し
②仕事に面白みを見出すこと
③専心努力すること、努力と勉強を重ねること
よく「習慣化」が大事だと言われる。でも、それだけでは突然飽きてしまうことがある。
しかし、「道楽化」すれば最強だ。幸せホルモンが出続ける限り、疲れていても、時差があっても、打ち込んでしまうからだ。道楽となっていれば、勝手に努力を続けてしまう。
そしてやがて仕事が上達し、それによって仕事が楽しくなるという好循環が生まれる。
好奇心を使って探求するほど、
自分ならではのアイデアが見つかる
そのためには、夢中で遊んでいる子供たちのことを思い出したり、ニコニコしながらバッターボックスに向かい、構えると突然ゾーンに入っている大谷翔平選手の画像を見続けたりするのは、いかがだろうか。
そうしてゾーンに入りながら、これは天職だなあと感謝しながら、天職を上達させる方法を考え、好奇心を使ってそれを追求していく。好奇心を使って、探求すればするほど、自分ならではのオリジナルなアイデアや切り口が見つかるものだ。
嬉々として遊ぶように仕事をしていると、不謹慎だと指摘する人々がいるかもしれないが、そんなことは知ったこっちゃない。
(本稿は『君はなぜ学ばないのか?』の一部を抜粋・編集したものです)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。



