会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

【経営者なら知っておきたい】会社が発展し続ける決め手とは?Photo: Adobe Stock

「お客さま第一」と「良い仕事」を追求する

 前回の話とも関係しますが、働く人がルンルン気分で働き続けられるかがとても大切です。

『論語』に「これを知る者は、これを好む者にしかず、これを好む者は、これを楽しむ者にしかず」とあります。頭で分かっているというよりも、それが好きだというほうが上で、好きというよりも楽しんでいる人がさらに上だということです。

 好きと楽しむの差は、単に好きと思っているだけと、実際に行動しているかの差だと私は考えています。

 いずれにしても、経営者も従業員も、仕事を楽しむことができるレベルに達することが大切なのです。

 それには前回も述べましたが、「目的」と「目標」の違いを認識することなど、経営者の基本的な考え方や姿勢が大きく影響しています。

良い仕事(1お客さまが喜ぶこと、2働く仲間が喜ぶこと、3工夫)」をすることに従業員を集中させていたら、とにかく「良い仕事」をしていればいいわけですから、従業員は楽しいのです。働きがいを感じるからです。

 従業員が会社にルンルン気分で来られるのは、仕事が好きだからであり、ひいては、お客さま第一や良い仕事を通じて、お客さまや働く仲間、社会に貢献することを自覚しているからに他なりません。

 もし仕事が、お金を稼ぐための手段でしかなかったら、お金を稼ぐまでは楽しいけれど、ある程度稼いでしまったら「もうこんなものでいいか」と思ってしまいます。あるいは、金の亡者になるかのどちらかです。

 いずれにしても仕事は儲けるための手段でしかなく、そんな人の集まりは「金の切れ目が縁の切れ目」の殺伐とした組織でしかありません。

「お客さま第一」を手段にする会社は儲からない

 一方、いつも「良い仕事をしよう」とい続けていたら、当然のことながら、いつまでもルンルン気分で仕事ができるはずです。なぜなら、多くの人に喜んでもらえるからです。

 そうして、どの従業員さんも楽しみながら、良い仕事をすることをずっと追い求めているほうが、間違いなく結果として会社は儲かるのです。そのような会社を働く人もお客さまも好きですからね。

「お客さま第一」を本当の目的にし、お客さまに喜んでいただける商品やサービスを出し続ける会社は、それができます。だから永遠に発展し続ける、永遠に儲かり続けるのです。

 でも、「お客さま第一」を手段にしている会社は、結局は伸びません。ある程度儲かったら経営者は満足して、儲かったお金をどう使おうか、余暇をどう使おうか、という話になってしまいます。

 一方、「良い仕事」とは、結果として稼ぐことができる仕事だと思っています。稼げない仕事というのは、人が十分には評価していない仕事ですから、「良い仕事」ではないのです。

 とにかく、結果として稼ぐことができるくらいの良い仕事をしなければならないのです。

 良い仕事かどうかは、人が評価するもので、自分で自己満足していてはダメなのです。評価するのは、あくまでもお客さまや社会です。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。