国内製薬最大手、武田薬品工業の定時株主総会は昨年、長谷川閑史前社長の相談役就任をめぐって紛糾した。今年の定時株主総会も大型買収の合意をめぐり、波乱必至の状況だ。

a3月にグローバル本社の竣工式を行った武田薬品工業。定時株主総会の波乱が予想される Photo by Masataka Tsuchimoto  拡大画像表示

 武田薬品がバイオ医薬大手のアイルランド・シャイアーと買収合意したのが5月8日。シャイアー1株に対し、48.17ポンド相当(現金と株の組み合わせ)で買い取る内容で、総額約7兆円となる。

 日本初のメガファーマ(巨大製薬会社)入り、希少疾患領域を含むパイプラインの充実、年14億ドル以上のコストシナジー──。クリストフ・ウェバー社長CEOの説明を信じれば良いことずくめだ。

 だが、株価は買収検討が表面化すると一気に下落し、ウェバー社長CEOが買収の意義を再三再四訴えても、6月18日時点で表面化前より約20%下落したままだ。「市場の評価が全てだ」と、元証券アナリストで市場調査会社ファーマセット・リサーチ代表取締役の三島茂氏は切り捨てる。

 一部の創業家筋や武田薬品OBらで組織され、持ち株比率約1%という「武田の将来を考える会」(約130人)は、買収規模と財務状況から判断して、「健全な会社経営にあまりにもリスクが大きい」と買収反対を表明。定時株主総会で、「事前に株主の意向を反映させることで、取締役会の買収権限に一定の制限を付ける」趣旨の定款一部変更を株主提案する。

 一見回りくどいが、狙いはもちろん、提案に付随してシャイアー買収反対の意向と理由を説明し、他の株主の賛同を得ることにある。