この提案に強制力はないものの、TOBは“対等合併”を求める昭シェルはもちろん、穏便に統合作業を進めたい出光にしても最も避けたい手段だった。市場関係者も「TOBなら合併が破談になりかねない」と懸念を示していた。

 経営陣が“外圧”に揺さぶられる可能性を懸念し、膠着状態にあった創業家との関係改善に動いたとも推測できる。

出光理念に反する矛盾

 6月28日の出光の定時株主総会では、株主から統合を後押しする声が聞かれたが、これで一件落着とはならないだろう。

 新会社の取締役に就任するといわれる、創業者の出光佐三氏の孫2人は現在、出光の社員。この2人に対して市場関係者からは「資質はあるのか」と懐疑的な見方が出ている。

 出光社内では、創業者の佐三氏が掲げた理念を今もなお大切にしている。その中にある「人間尊重」は、ほかの従業員と一致団結して国のため、人のために働き抜くことを説く。

 この理念を孫2人がないがしろにしているという声が漏れ聞こえてくるのだ。ある出光の販売店会長は、「孫たちはろくに出社もせず、仕事もしていない」と明かす。

 “外圧”に屈服した結果、出光経営陣は、創業者が重んじた理念に反するという矛盾を抱えたまま新しい船出を迎えそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)