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テクノロジーの変曲点は
もはやビジネスの大きなリスクだ

――IBMリサーチのジョン・ケリー氏に聞く

大河原克行
【第175回】 2018年7月6日
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量子コンピュータの責任所在という問題

 だが、その一方で、いくつかの課題も指摘する。

 一つは技術的な課題だ。安定した多くの数のキュービットを作り出す技術や、エラーを発生することなく、大量のキュービットをつなげることができる技術の開発が急務だという。さらに、量子コンピュータ上のプログラムを最適化することも重要だと指摘する。「これまでのプログラムとは大きく異なるプログラムが必要であり、そのための技術者を育成する必要がある」とする。

 さらに、社会への影響という点で、新たな問題が発生する可能性も課題のひとつとして指摘する。

 「量子コンピュータという新たなコンピューティングの登場は、これまで以上に、ディスラプション(破壊的イノベーション)を加速することになる。とくに、テクノロバーカンパニーへの影響が大きいが、それらの技術を活用する企業への影響も避けられない」と警笛を鳴らす。

 たとえば、どんなに強固な暗号化技術も、量子コンピュータを使えば、瞬時に解読されてしまうということも起こりかねないというのだ。「いままでのすべてのセキュリティ技術が無意味なものになってしまう可能性もある」と指摘する。

 そして、ケリー氏は、「これから数年、大きな問題となってくるのは、誰が量子コンピュータを持つのかということだ」とも語る。

 「持つ者と、持たざる者との差が大きく、持つ者が巨大な優位性を発揮することになる。量子コンピュータを持っているものが勝者になり、それ以外のコンピュータを持っていても、何の意味も持たないという時代が訪れる。企業競争においても、これまでのバランスを完全に崩すことになる」

 これは、量子コンピュータを提供するIBMにとっても社会的責任が生じる事柄だとする。

 「どの国やどの企業、どの個人に対して、量子コンピュータへのアクセスを認めるのかが大切な要素になってくる。我々も、慎重に、責任を持って行動しなくてはならない。IBMの企業文化や価値観は、新たな技術を発明するだけでなく、責任を持って導入するところにある。過去のテクノロジーの変化にも責任を持って取り組んできたが、今回の変化は、これまで以上に重たい責任がある」と語る。

 現時点で最高性能の量子コンピュータを商用ベースで世の中に提供することになるのは、IBMになりそうだ。

 「クレイジーなやり方では導入できない。ここ数年で、誰が使うのかということを考え、決定しなくてはならない」と、ケリー氏は自らに問う。

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