ドイツでオペラに取り組んだ20年間
大阪のオケが発見した!

 留学してから2年目、2000年にデュッセルドルフのライン・ドイツ・オペラ(Deutsche Oper am Rhein)でコレペティトゥーア(Korrepetitor)として採用される。

 コレペティトゥーアとは、歌手の練習のためのピアノ伴奏や指導を担当する職種で、高度な音楽知識、語学力、演奏技術が必要とされる。膨大なオーケストラのスコアを前に、たちまちピアノに置き換えて伴奏するのだからたいへんだ。それにイタリア語、ドイツ語、フランス語、英語、ロシア語を勉強して歌詞やセリフを覚えなければならない。

 本番でも鍵盤楽器が必要な場合は、ソリストとして演奏することにもなる。日常的にオペラ制作に従事するわけだから、年がら年中、劇場にいることになる。劇場指揮者の修行としてコレペティトゥーアは避けて通れぬ道だが、小林は8年間、この劇場に勤めているのだからすごい。

 その後、2008年にドルトムント市立歌劇場の第2指揮者として契約することができた。音楽監督がガブリエル・フェルツに交代した2013年には、第1指揮者及び音楽総監督代理に就任している。これほど腰を落ち着けてオペラに取り組んでいる日本人指揮者も珍しい。

「日本ではマネジメントをどこにも委託していません。仕事があれば短期間でも日本に行くのですが、まとまった期間ですと真夏の7月中旬から8月末しかないのです。真夏ですと、オーケストラやオペラの公演もあまりないですからね」

 結局、ドルトムント市立歌劇場でデビューしてから10年、一度も日本で指揮する機会がなかったのだが、ネット上で小林の存在を知った大阪交響楽団が、2017年7月にドルトムント音楽総監督のガブリエル・フェルツを招いた際に確認し、小林の招聘が決まったという。日本のプロのオーケストラが、初めて小林を発見したのである。