長谷部誠と吉田麻也
吉田麻也は長谷部の代表引退に涙するほど信頼を寄せていた Photo:AFP/AFLO

優勝候補ベルギー代表との歴史的な死闘の末に、ベスト16でワールドカップ・ロシア大会から姿を消した日本代表の中でひとつの時代も終焉を迎えた。ワールドカップで3大会連続、実に8年間もキャプテンを務めてきた34歳のベテランにして精神的支柱、長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)の代表引退表明。偉大なる背中を間近で見続けてきた29歳のDF吉田麻也(サウサンプトン)は、長谷部に言及した際に人目をはばかることなく号泣。常に誠実な人柄と立ち居振る舞いを介して、5人の日本代表監督から厚い信頼を寄せられてきたレジェンドが残した魂のバトンを、新生日本代表でも最終ラインに君臨するセンターバックが受け継いでいく。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「日本代表」は選手にとって特別な場所
そこに自ら別れを告げたキャプテン・長谷部

 51歳になった今もピッチに立ち続ける永遠のレジェンド、FW三浦知良(横浜FC)は2001年12月の韓国代表戦を最後に遠ざかっている日本代表に対し、その胸中に畏敬の念を刻み続けている。

「ワールドカップは僕の永遠の夢でもあるし、現役である以上は、今の自分の実力が代表レベルにないことは分かっていますけど、それでも日本代表を目指す気持ちを抱き続けたい」

 まだ見ぬ世界だったベスト8へと通じる扉に手をかけながら、優勝候補ベルギー代表に逆転負けを喫したワールドカップ・ロシア大会で最も評価を上げたMF柴崎岳(ヘタフェ)は、約2年間のブランクを経て代表復帰を果たした昨年8月に神妙な口調でこう語っている。

「運命というか、ベストを尽くして自分なりのサッカー人生を歩んでいれば縁のある場所だと思っていました。ただ、選ばれたいと思っても、自分でコントロールできることではないので」

 両者から伝わってくるのは、日本代表とは常に特別な場所である、という聖なる思い。そして、日の丸を背負いたいと強く念じることはあっても、自ら別れを告げることはないという不退転の決意だ。日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長も、こんな言葉を残している。

「代表から引退する、という言葉があるのかどうかは分かりません」