読者の皆さんは、老後に必要な金額について、先のような「平均」に基づき金額から安易に説明を起こす金融マンやFPを信用しない方がいい。彼らは、役に立たないばかりか、有害でさえある(3)。

 加えて、もちろん、89歳で資金が尽きることが分かっていながら、「ゆとりのある老後の生活」のための支出を漫然と続けてはいけない。もっとも、多くの人はもう少し計画的に老後の生活を調節するだろう。「資産寿命」が尽きることの恐怖感をあおるたちの悪い試算だ。なお、記事広告にはもちろん資産が尽きるグラフが載っている(4)。

 また、不確かな将来の投資の利益を当てにして支出を計画・実行することは、「やってはいけない危険なこと」の一つだ。まして、現在「3%」は、相当のリスクを負わなければ達成できるとは期待できない利回り水準だ(5)。

高齢者向けの “地雷商品”の好例

 それでは、現在3%の運用利回りを得るためには、どのくらいのリスクを取った運用が必要と考えられるだろうか。年金基金などの機関投資家が内外の株式に想定する期待リターンは現在年率5%前後の数字だ。一方、債券の期待利回りはほぼゼロ%なので、株式と債券の組み合わせで3%の期待リターンを得ようとすると、株式を60%ほど持たなければならない。

 また、現実には、市場で得られる株式や債券のリターンを、投資家がそのまま手にできるわけではない。この広告が紹介する商品の信託報酬(運用管理費用)はほぼ年率1%なので、実際には、ファンドの中身の運用利回りは4%必要だ。宣伝している投資信託が「目指す」と言っている年率「3%」は、とても株式の上限比率が30%で目指せるものではない。

 投資家は、運用会社の言う「目指す」と「できる」ということとの間には大きな差があることを認識すべきなのだが、そういう当たり前のことが分からない人がいるから、ここで宣伝しているようなクズのような商品が売れる現実があるのだろう(6)。

 加えて、この商品は、公的年金が支給されない奇数月に分配金を支払うという、マネーリテラシーの低い高齢者に媚びた“あざとさ”を持っている。毎月分配型と同様に、隔月分配型にも投資しない方がいい。この商品が年率3%の利回り相当の分配金を年に6回支払うとすると、2000万円の残高がある人は、一回10万円の分配金を年に6回受け取って、信託報酬だけで約20万円も支払うことになる。何と馬鹿馬鹿しいATM(自動支払機)であることか。

「高齢者には分配金のような現金受け取りのニーズがある」などと愚かなことを言う人もいるのだが、必要な現金は銀行の普通預金に置いておいて適宜引き出すといいし、投資信託は通常手数料ゼロで一口単位で解約できる。リスクを取った運用についても、もっと手数料の安い効率のいい商品が多数ある(7)。

 金融マンやFPは、もったいぶらずに、もっと安上がりで効率的な資金管理の方法を顧客教えるのが、人間として正しい姿だろう。

 こんな商品を勧めていると、明らかに無駄な手数料を取られた高齢者が、将来これを恨んで、金融機関の店頭に化けて出るのではないだろうか。もっとも、それは、あの世にまともな投資教育があればの話だ。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)