埋まらぬ経営と現場の溝

 山内CCOは、今回のデータ書き換えと無資格検査の原因は「同根」だと指摘する。

 例えばコンプライアンス意識の希薄さ、あるいは法令と現場職務の実態の乖離。こうしたことが長年放置され、経営陣が把握し切れない状況が続いたことが背景にあるとみられる。ただし今回、あらためて浮き彫りになったのが、経営層と現場の間の深過ぎる溝だ。

 日産は昨秋の不正発覚後、従業員の再教育や監査の改善、経営層と現場のコミュニケーションを増やすといった再発防止策に取り組んできた。経営トップの西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)も、工場を訪れた際に法令順守の重要性を従業員らに伝えていたという。

 だが一部の工場では、スバル問題を受けた社内調査で判明する6月まで不正が続いた。無論、内部通報などで現場から不正を疑問視する声が上がることもなかった。

 それはつまり、経営陣の再発防止への思いが、全く現場に届かなかったことを意味する。あるいはそもそも、経営陣の思いそのものが、現場にしっかり伝わるような重みを伴ったものだったかも疑わしい。

 西川社長は記者会見の場に姿を見せず、その理由について山内CCOは「私が対策、実行の責任者」と説明したが、日産の「顔」である経営トップが自らの思いを語るべきではなかったか。スバルの吉永泰之氏は社長とCEO職を辞したが、西川氏も同様に責任を取り、自らの身をもって事の深刻さを全従業員に伝えるべきではないか。

 山内CCOが認める通り、日産が抱える問題は「根深い」。だからこそ、まずは大前提としてトップが代わらなければ、企業体質の抜本的な改善は望めない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)