無資格の従業員が自動車の完成検査を行っていた問題をめぐり、日産自動車は11月17日、弁護士ら第三者を交えた調査チームによる報告書を国土交通省に提出した。この調査報告書から浮かぶのは、現場の実態を見過ごし続けた経営陣の姿だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)
「自動車工場の現場では、無駄を削減し効率を上げる改善が基本動作として行われている。『当たり前のことをやっていたのに』というのが現場の率直な感覚だろう」。日産自動車で発覚した無資格検査問題を受け、あるOBは指摘する。
このOBが言う“無駄”とは、完成検査員の指名手続きを指す。
完成検査は、国の代わりに自動車メーカー自らが行うことが義務付けられているものだ。だが、その検査を担う完成検査員の指名手続きは工場の実態とあまりに乖離し、現場とすれば“無駄”でしかなかった。
そこで現場は不正と認識しながらも、コスト削減要求に応えるため“当たり前”のように法令違反を犯し、それを現場に無頓着な経営陣が放置し続けた。日産で無資格検査が長年にわたって継続された本質的な原因はこの点にある。
そもそも完成検査員とは何か。国土交通省は通達で「検査に必要な知識および技能を有する者のうちからあらかじめ指名された者」と定めている。しかしこれは国家資格ではなく、認定基準は各社まちまちだ。