現地に派遣された人生経験の浅いフレッシュな記者が、災害現場という張り詰めた修羅場で、被災者らに無礼な振る舞いをするかどうか想像してみてほしい。

 もし無礼な振る舞いをするならば、それは記者としてではなく、人間としてどこかに欠陥があるのだろう。筆者の知る限りでは、災害現場では平身低頭、謙虚で礼儀正しい記者ばかりだった。

 そして、取材では「お願いする」というスタンスが当たり前で、嫌がる被災者を追い掛け回すということもあり得ない。嫌がる被災者を追い掛け回しても取材に応じてもらえるわけがないことは、記者ではない一般の方でも容易に想像できるだろう。

 であれば、取材を断られたら「すみませんでした。ご無礼致しました。お気をつけて」と声を掛けてその場を辞し、ほかの被災者に声を掛けた方が手っ取り早いのだ。

 何か災害取材を批判する方々には、記者は腕章を着けた瞬間に人格が変わって傍若無人になり、他人の嫌がることを嬉々として意図的にやっているとの誤解でもあるようだが、もちろん、そんなことはない。

 記者の大多数は「他人の嫌がることはしない」という社会的常識を持ち合わせた、ごく普通の一般人でもある(当たり前だが、どんな組織にも一定数のおかしな人物が存在するのもまた事実でもある)。

被災者に寄り添える記者とは

 繰り返しになるが、災害取材に嬉々として取り組んだり、楽しんだりしているような記者はまずいない。

 もしいるとすればかなりの変わり者だが、少なくとも筆者はそういう記者はお目にかかったことはない。筆者が現場に派遣された当時の心境はどうだったか。やはり「被災者の復旧作業の邪魔をしているのではないか」「遺族や被災者の傷に触れているのではないか」という後ろめたさがつきまとい、いつもより丁寧に、腰を低くして話し掛けるようにしていた。そして、ベテランになって感じたのは、普段から礼儀正しく、遺族に寄り添えるような優しい人柄の記者が、心を打つようないい原稿を送ってくることだった。

 それでは、災害現場で記者らは被災者にどのようにアプローチしているのだろうか。