ゴールデンウィーク直前となり、旅行業界にとっては“ホット”な季節がやってきた。しかし、今年の旅行市場を見ると、かつてない「異変」が起きているようだ。前年と比べて海外旅行へ出かける日本人がさらに増える一方、国内旅行へ出かける日本人や、日本を訪れる外国人が減り続けることが予想されている。各種機関のデータを見ると、そのトレンドは想像以上に鮮明化していることがわかる。昨年発生した東日本大震災の影響が、1年を経た今年のGWにも暗い影を落とし続けていることを、思い知らされる。国内で進む「旅行市場の空洞化」を食い止めることはできるのか。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)

旅行業界にとって最もホットな季節に異変?
盛り上がる海外旅行と萎み続ける国内旅行

「ゴールデンウィークには、ベルギーへ行く予定です。新婚旅行で行ってから15年の節目に、もう一度妻と2人で思い出の地を訪れたいと思って。この不況だから、貯金はあまりないですよ。でも、節約ばかりしていると自分自身の視野が狭くなり、小さい人間になってしまうような気がして。たまには豪華な旅行に行ってみたいじゃないですか」

 こう語るのは、インフラ機器を扱う商社に勤務している45歳の男性だ。

 ゴールデンウィーク直前となり、旅行業界にとっては“ホット”な時期がやってきた。しかし、今年の旅行市場を見ると、かつてない「異変」が起きているようだ。

 第一の「異変」は、海外へ出かける日本人の数が、例年と比べてさらに増えると見られていること。旅行業界国内最大手のJTBが行なった『ゴールデンウィークの旅行動向』で推計数値を見ると、今年4月25日~5月5日までの間に1泊以上の旅行に出かける人の総数は、前年比4.2%増の2120万8000人に上る。

 そのうち、毎年のように増え続けている海外への旅行者数については、今年は1969年の調査開始以降、過去最高を記録した2000年に次ぐ、56万3000人に上る見通しだ。冒頭の男性のように、ゴールデンウィークに海外旅行の予定を入れた人も少なくないのではないだろうか。

 今年人気がある海外旅行の渡航先は、イタリアを筆頭に欧州方面。調査によると、前年と比較して旅行者数は5.2%増だそうだ。また、北米が4.7%増、アジアが4.9%増と軒並み増加する見込み。5月1、2日に休暇を取れば9連休になる日の並び、円高により海外で安くモノが買えること、そして何より不況による「節約」に疲れて羽根を伸ばしたい人が増えていることなどが、その理由だ。韓国や台湾など「安・近・短」の定番スポットだけでなく、欧州などの遠方にも人気が集まっている。