衆院選の演説で気勢を上げる高市首相1月31日、川崎市内にて Photo:JIJI
高市首相が衆院選の遊説で「円安は輸出産業にとっては大チャンス」「外為特会の運用がホクホク状態」などと発言し物議を醸している。その後のSNS投稿で、「為替変動にも強い経済構造をつくりたいという趣旨だった」と説明したものの、「円安を容認しているのでは」との指摘は多い。一方、トランプ米大統領は「ドル高を是正したい」狙いがある。それはなぜか。外国為替市場の最新事情と、金(ゴールド)保有が世界で高まる背景を解説する。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
高市首相“円安容認”発言の裏で
ドル高の是正を狙うトランプ政策
高市首相の“円安容認”ともとられかねない発言が飛び出す数日前、米当局が為替介入の準備段階とされる「レートチェック」に動いたとみられて以降、ドル安が進んでいた。元来、トランプ米大統領はドル高に懐疑的な姿勢だった。ドルが高くなることは、米国の輸出企業にはマイナスで、米国の製造業の復活を狙うトランプ政策には好ましくないとの認識だ。最近、それを示唆する同氏の発言が目立っている。
ドル安になると米国は輸出が増え、製造業は復活し貿易赤字は減少するだろう。それにより短期的には雇用や所得は増えるはずだ。米国を再び偉大にする(Make America Great Again=MAGA)のためには、ドルは安い方がよいということになる。今年11月頭の中間選挙に向けた支持率回復のために、トランプ氏はドル高の是正にこだわる可能性は高いとみることができる。
トランプ政策には課題も多い。まず、いくらトランプ氏が「ドル安がいい」と言ったとて、自身の発言だけでドル安を実現することは簡単ではない。投資家の多くがドル高を見込むと、どうしても市場はその方向に向かいやすい。
もう一つは、そもそもドル高の是正が本当にメリットをもたらすのかだ。ドル安が進めば一時的に米国の景況感が上向く可能性はある。ただし、ドルの下落によるマイナス影響もある。ドルの下落が続けば、海外投資家のドル資産離れが起きることも懸念される。その場合、ドル安・株安・債券安のトリプル安に陥ることも考えられる。
国際連携を無視・否定するようなトランプ氏の発言は増えている。それは、国際経済におけるドルの信認を傷つける。トランプ氏が米国の覇権を拡大する、いわゆるドンロー主義は、ドルの信認を低下させるとの悲観論もある。トランプ氏の思惑とは逆に、ドル売りが増加し、“米国売り”が発生するリスクは否定できない。







