自分たちの組織を振り返るときに、ぜひ着目していただきたいのは、まさにこの(2)の女性たちの存在です。すでに見たとおり、僕たちのリサーチでは、こうした女性が全体の「2割弱」を占めていました。「たった2割?」と思うかもしれませんが、今後も続くことが予想される人手不足の状況を考えれば、決して無視できない割合です。放置しておけば、彼女たちもそのうち(3)・(4)のグループに移ってしまうかもしれませんし、もっといい場所を求めて会社を離れてしまうかもしれません。
実際、日本の女性の離職には、育児・介護といった外的な要因以外に、本人の仕事に対する不満や行き詰まり感など、内面的なつまずきが強く影響していることがわかっています(Hewlett and Sherbin 2011)。
人事担当者、経営者のみなさんが、まず解決するべきは(2)のグループの女性たち、すなわち「できるだけ長く仕事を続けたいとは思っているが、いまの職場には不満がある女性」なのです。
女性は「やりがい」重視、男性は「見返り」重視!?
そこで見ていただきたいのが、次のデータです。こちらは「働くうえで最も重視しているもの」のうち、男女差が大きかった上位2つを示したものです。
こちらのデータからは、どのような思いや考えで、女性・男性が働いているのかが見て取れますが、男性にはちょっとショッキングかもしれません。
「仕事をするうえで重視していること」のうち、男女のギャップが最も顕著に見られたのは、「大変でもやりがいのある仕事をすること」でした。21.6%の女性が「やりがい重視」と答えたのに対し、同じ答えをした男性は16.1%と、5.5ポイントの差が見られます。女性は「職場でどのような仕事をするのか」を働くモティべーションとしているのです。
2番目に差が大きかったのは、「見返りのある仕事をすること」でしたが、これは先ほどとは対照的に男女が逆転しています。男性の14.8%が「給与アップにつながるかどうか」を重視する一方、そう考えている女性は11.3%であり、両者のギャップは3.5ポイントでした。
あえて言えば、女性は「仕事のやりがい重視」、男性は「見返り重視」の傾向が見られるということです。お金や出世といった見返りを求める男性と、苦労はあっても内面的な満足を求める女性─ここまで図式化するとあまりに乱暴でしょうか。
詳細は『女性の視点で見直す人材育成』をご覧いただければと思いますが、女性に見られる「やりがいを求める傾向」は、「だれもが働きやすい職場」をつくっていくうえでの重要なポイントになります。