視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
大手ゼネコンの社員は自宅の一軒家すら
設計できないかもしれない
先日、40代後半の友人と食事をしたときに「実は転職を考えているんです」と打ち明けられた。
彼は大手ゼネコンで内装設計を担当するエンジニアだ。私と仕事上の付き合いはない。業界もまったく異なるので、このような話もしやすかったのだろう。
彼は今の会社に入社して25年になる。これまでに、商業施設やホテルといった大規模な建築プロジェクトに幾度も加わってきた。
ゼネコンが扱うような建築物の設計を、一人で全て担当することは、ほぼないと言っていいだろう。内装や設備など専門領域ごとに分担して一つの建物を設計するのが普通だ。
だがそれだと、ゼネコンの社員は、特定の領域の専門家にはなれるが、建築のトータルなスキルがなかなか身につかないということになる。
だからその友人は転職を考えているというのだ。
つまり、建築家に憧れてゼネコンに就職したものの、今の仕事をこのまま続けていっても、自分が住む一軒家ですら設計できるようにはならない。「それじゃあ、つまらないな、という思いが最近強くなったんです」と、彼は目を輝かせながら語っていた。
彼が転職先として考えているという中小の建設会社ならば、少なくとも今よりは広い範囲の仕事を任せられるだろう。
特定の領域ながら建築業界で確かな実績を積み、現場管理の経験も豊富。しかも、きちんとコミュニケーションもとれる彼のような人材なら、きっと存分に力を発揮できるに違いない。
一つの建物全体の設計を担当できるのはもちろん、小さな組織でトップとの距離が近いのならば、経営に関わるチャンスもあるのではないか。
そのように大きく可能性が広がる転職であるならば、40代後半でも決して遅くはないはずだ。
本書『赤字30億円からV字復活させた 逆転発想の人材・組織改革術』では、まさしく彼のように大手企業で実績を積んだ中高年の人材を活用するメリットを説いている。