ガムの売り上げ減が続くいっぽうで、グミやミント系の錠菓(タブレット菓子)などは好調だという。
口の中をスッキリ爽快感にしてくれるアイテムの勢力図は、ここ数年で大きな変化をみせている。そんな時代だからこそ、あの“大御所”の存在を忘れてはならない。
「仁丹」。
銀色の小粒のアイツである。
誕生したのは明治38(1905)年。実に110年を超える歴史をもつ大ロングセラー商品だ。
存在そのものは実にメジャー。ずっとそこにある存在。だけど、そんな仁丹のこと、実はあまりよく知らないのではないだろうか。薬なのか、菓子なのか、それとも別の何かなのか。
「現在は医薬部外品の扱いです」
仁丹の製造販売元・森下仁丹ヘルスケア事業本部の竹中はる花さんは言う。
「気分不快、口臭、二日酔い、悪心嘔吐(おしんおうと)……医薬部外品としての効能・効果はもちろんきちんとあります。かつてはもっといろいろな効果が表記されていました。使用している16種類の生薬は、今では入手が難しくなって産地が変わったものもありますが、処方としては変わってはいません。製法も現在は機械ですが、基本的には同じです」
仁丹の成分は、甘草、桂皮(けいひ)、丁字など十数種類。これらがあの独特の香りと味の元で、それを銀箔(ぎんぱく)コーティングしているのが銀粒仁丹だ。
仁丹の前身的存在が、同社(当時は森下南陽堂)が明治33年に発売した「毒滅」。これは、当時流行していた梅毒の対処薬で、パッケージには当時のドイツの宰相ビスマルクの顔が描かれていた。
「創業者の森下博が台湾出兵した際に、現地で何にでもきく総合薬という丸薬が出回っているのを目にしました。それを日本で作れないかというのが最初ですね。ここから試行錯誤を重ね誕生したのが、仁丹です。ただし、赤玉で、もっと大きなものでした」