ファンやサポーターに不完全燃焼の思いを募らせてきた軌跡を右肩上がりに転じさせる、起爆剤としての役割を竹原社長はトーレスに託す。同時にサガンだけでなく、日本サッカー界の未来を担う若手や子どもたちの羅針盤にもなってほしいという願いも託されている。竹原社長が続ける。

「チャレンジしていくクラブであり続けるためのステップとして、プレーヤーとしてだけでなく人間的にも素晴らしい選手が目の前にいる。若手や子どもたちが彼を目標にして、スポンジのように吸収していくことを夢見ている。トーレス選手に期待することは、本当に多岐にわたります」

 サガンはアトレティコ、セリエAのユベントス、オランダの名門アヤックスと懇意にしている。2年前にはアカデミーの子どもたちをスペインへ遠征させて、トーレスと面会させる場も設けている。長年にわたって積み重ねられてきた努力も、今回の移籍決定につながったと言っていい。

「地方の田舎チームとして、J1で戦う難しさを財源的にも人材的にも考えさせられる中で、早い期間でユースの成長を促したかった。特にセンターフォワードを育てることは、私たちのユースにとっての最大の課題だと思ってきたので」

 今シーズンを戦う選手で言えば19歳のFW田川亨介。サガンのユースが初めて輩出した2年目のホープは年代別の日本代表に名前を連ね、2年後の東京オリンピック出場を視野に入れる。このタイミングでクラブがトーレスを獲得した意義を、感じずにはいられないと表情を引き締める。

「めちゃ真面目に練習へ取り組んでいる姿勢を、ずっと見てしまいました。自分はそこが疎かになっていたと、彼の真面目さを見てそういう気持ちにさせられました。自分が(クラブから)期待されているのは感じているし、何年か後には(トーレスを)超えられるような存在になりたい」

 来日翌日の16日からサガンの練習に合流したトーレスの一挙手一投足から、当たり前のことを黙々と消化することの大切さを田川は早くも学び取った。自らの存在が未来への投資となることも、サガンへの移籍を後押しさせたのか。トーレス自身もこんなメッセージを発信している。

「若い世代にできるだけのことを伝えたい。サッカーにおいて大切なのは情熱と夢を持つことだと、子どもたちには常に言ってきた。情熱や夢を教えることはできない。自分で夢を見つけて、前へ進んでいってほしい」