40年以上も放置された
古民家が蘇った
香川県三豊市仁尾町。瀬戸内海の中でも波が穏やかなことで知られる燧灘(ひうちなだ)に面した、人口6000人の静かな町である。江戸時代から漁業や製塩業、醸造業で栄えた歴史を持っている。この町にやって来る人の多くは、「松賀屋」という築100年を超す古民家の訪問を目的にしている。来訪者はここに泊まって自然を満喫したり、行事に参加して町の人と交流をしたりと、思い思いの休暇を楽しんでいる。
実はこの松賀屋は「シェアビレッジ」と呼ばれる活動の拠点になっている。地方活性化の新しい手法として期待されているシェアビレッジ。文字どおり、村や町を大勢の人が共有し、盛り上げていく試みである。
制度はシンプルだ。年会費(3000円)を納めれば、誰でも「村民」になることができる。好きな時に「村」を訪れ、宿泊をしながら田舎生活を体験したり、地元の人と触れ合ったりと楽しんでいる。
「仁尾町は、古くから瀬戸内海の海水を利用した製塩業が盛んな土地でした。松賀屋は、塩の売買で財を築いた地元の有力者、塩田忠左衛門が明治時代に建てた旧宅です。敷地には2階建ての母屋をはじめ、離れ、蔵などが建ち並ぶ古民家です。しかし、製塩業の衰退とともに空き家となり、40年以上も放置された状態でした」(シェアビレッジ仁尾を運営する一般社団法人『誇』のメンバー、以下同)
当初は旅館としての活用を考えていたが、諸事情により叶わなかった。しかし、仁尾町にとっては、町のシンボルとも言える重要な建物。それを残すにはどうすればよいかと考えた結果、シェアビレッジプロジェクトに参画しクラウドファンディングを利用して、改装費用を調達。2015年に二村目の村「シェアビレッジ仁尾」として開村をすることになった。
「開村祭には、県内だけでなく県外在住で村民になってくださった方々をはじめ、大勢の方が駆けつけてくださいました。長年閉鎖されていた松賀屋が開いていると聞き、地元の方もお祝いに駆けつけてくれました。去年開催した夏祭りでは敷地内に櫓を組み、地元の方にもたくさん来ていただきました」