では、子育て支援策が遅れた背景には、何があるのでしょうか。往々にして「若者に比べて高齢者の投票率が高いので、年金などの高齢者向け給付を優先した」と説明されがちですが、果たしてそれだけなのでしょうか。

『私は二歳』価格:DVD¥2,800(税抜)/ 発売元・販売元:株式会社KADOKAWA

 その背景を映画からひもときましょう。最初に取り上げるのは1962年製作の『私は二歳』という映画です。

 主演は、小川太郎という乳幼児。父の五郎(船越英二)、母の千代(山本富士子)の間に生まれた長男で、0〜2歳の目から見た夫妻の会話、そして千代と五郎の母(浦辺粂子)の対立、家庭環境などを描いており、中村メイコが「僕は生まれて最初に見たものは、ボンヤリした影だ」などと、赤ちゃん言葉で太郎のセリフを述べる少し風変わりな映画です。

 子育て支援策が絡むのは、太郎が1歳の頃の話。小川家が住んでいる団地はエレベーターを設置しておらず、勾配が急な階段しかないため、太郎がウロウロするだけで階段から落ちないかどうか、千代は肝を冷やします。

 さらに、隣の棟で赤ん坊が窓から落ちる事件が起きてしまい、千代は動揺します。そこで近隣に住む主婦(岸田今日子)が千代に対し、こんな言葉を掛けます。

「どうしても託児所がいるってことなのよ。子どもにケガをさせないでおこうと思えば、家の中に閉じ込めとくか、親が仕事を放っておいて監視するかでしょう?親も子どもも自由がなくてヒステリーよ、全く。団地の事務所じゃ保育所は児童福祉法でやるので、貧困家庭が目標だから、こんな結構な住宅に住んでいる人のためには建てられないし、建てる予定もない。いくら掛け合ってもラチが明かないから、私たち(注:小さい子どもを持つ母親たち)だけでやろうかって昨日も話していたところなのよ」

 ここでは「託児所」「保育所」が使い分けられていますが、基本的には同じです。要は、団地のような「結構な住宅」に住んでいる人は、子育て支援策の対象外と言っているのです。

 この後、小川夫妻がどうなったのか、太郎はどこまで成長したかといった詳細はDVDでご覧いただくとして、このセリフに子育て支援が遅れた一因が秘められています。

 つい最近まで保育所の対象者は、「保育に欠けるもの」とされていました。セリフで言っている「貧困家庭」は少し誇張ですが、やや正確性を無視して分かりやすく書くと、行政が「保育に欠けるもの」だけを選び、こうした世帯に選別的に支援する仕組みだったのです。