待機児童対策をするほど待機児童が増えるパラドックスの打開策

 12月8日に、幼児教育無償化、高等教育無償化、待機児童対策などを柱とする2兆円の新政策パッケージが閣議決定されました。

 11月27日放送のBS日テレの討論番組「深層NEWS」でも、ベストセラー『学力の経済学』の著者としておなじみの中室牧子・慶應義塾大学SFC准教授とご一緒に出演いたしました。テーマは「いまなぜ教育無償化か」。先の衆院選で、政権与党が教育無償化や待機児童対策を含む「2兆円パッケージ」を公約に掲げましたが、その意義や妥当性について議論しました。

教育への投資にまたとないチャンス
長期戦略で投資対効果の高い幼児教育

「2兆円パッケージ」は2兆円のうち約8000億円が認可保育所・幼稚園の無償化や待機児童対策に充てられ、3~5歳児は全て無償、0~2歳児は所得制限つきで無償化という方向となりました。

 現在は、税金の多くが、老人向けの年金・福祉・医療費や国の借金返済などに使われていますが、子ども・若者への投資もしっかり増やしていくという方向は大賛成です。特に、昨今、子どものいる世帯が1986年には全世帯の46%であったのが、23%に半減していて、教育や子どもへの投資増に関して有権者の支持を得ることが難しくなっているなか、つまりは教育や子育てが票にならなくなっているなか、教育・子育てへの予算配分を大幅に増やしていく、またとないチャンスとなっています。その意味で、政治のリーダーシップに大いに期待しています。

 特に、保育所、幼稚園及び認定子ども園で行われる幼児教育・就学前教育への投資は、将来、犯罪率の低下、貧困率の低下、失業率の低下により、治安維持、生活保護関係費の増加抑制、所得増加による税収増、産業社会構造転換の促進、長期的な成長戦略、社会政策として、極めて重要な投資対効果の高い政策だといわれています。

 そもそも、OECD諸国の平均では、就学前の子どもの教育・保育に必要なお金の8割は公が負担しているのに対して、日本はわずかに4割しか、公が負担していません。そのことが重い子育て負担、ひいては、出生率の低位安定の原因ともなっています。ですから、少子化対策上も、保護者世帯の負担軽減が重要となっています。こうした若い保護者の世帯は消費性向が高いので、負担を軽減すると、消費増に直結し、高い景気浮揚効果もあります。