ダイヤモンド社刊上下巻各1800円(税別) |
「働く者との関係においてまず問うべきは、彼らに何を求めるかである」(『現代の経営』)
この問いに対する、決まり切った答えは「正当な一日の報酬に対する正当な一日の労働」である。しかし、報酬と労働のいずれについても、正当とは何かは定義しえない。
それ以上に問題なのは、この言葉が働く者に少ししか要求せず、しかも間違ったものを要求していることにあるとドラッカーはいう。
要求すべきは、組織全体の目標への貢献である。働く者からなにかを得ようとするならば、正当な労働よりもはるかに多くを求めなければならない。正当さを超えた貢献を求めなければならない。
従順さなど求めてはならない。逆に、攻撃的な文化を生み出すことを求めなければならない。
要求されるものが大きいほど、人は多くを成し遂げる。要求が大きいほど、人は多くを生み出す。それが、人間という存在の特性である。
しかも人は、誇れるものがあってのみ、誇りを持つ。なにかを達成したときにのみ、達成感を持つ。仕事が重要なときにのみ、自らを重要と感じる。
高い水準を要求することほど、仕事の改善に挑戦させるうえで効果的なものはない。仕事と自己実現の誇りをもたらすものはない。
「絶えざる努力によってのみ実現される最高水準の仕事に焦点を合わせるとき、動機づけが行われる」(『現代の経営』)