写真フイルム市場の崩壊に直面し、総合ヘルスケア企業へ転じた富士フイルム。買収に買収を重ねた異業種参入組の代表格だが、ヘルスケアビジネスのカギを握るのは伝統の写真フイルム技術だった。『週刊ダイヤモンド』7月21日号の第1特集「製薬 電機 IT/医療産業エリート大争奪戦」の拡大版として、産業のキーマンたちのインタビューを特別連載でお届けする。第9回は富士フイルムの柳原直人R&D統括本部長に聞く。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)

――バイオ医薬品で成功したメガファーマ(巨大製薬企業)が、再生医療に対しては投資の優先順位が低い。富士フイルムは再生医療に力を入れているが、本当に大化けするんでしょうか。

柳原直人・富士フイルムR&D統括本部長  Photo by Masato Kato

 いずれ大化けするタイミングがくると思います。その時期が明確には見えてないから、業界全体では躊躇しているのかもしれません。

――治療の有効性のほかに壁となっているものがある?

 実用化するには値段が高いとか、再現性の問題が挙がっています。再現性というのは、同じ細胞をきちんと大量に培養できるのか、ということです。

 世間で注目を浴びたSTAP細胞でも再現できるのかが焦点になりましたね。バイオの世界では、一度作れても再現できないなんてことが当たり前に起きます。工業化、産業化するには、再現して、その品質を管理しなければいけない。この品質保証する力。写真フィルムを作ってきたうちが得意とするところです。

――写真フィルムの品質保証力がバイオの再現性とどうつながるんですか。

 結婚式とか一生の思い出になる写真を現像してみたら欠陥があったなんて許されませんよね。だからアナログ写真のフィルムは撮る前の段階で品質を保証しなくてはいけませんでした。

 写真フィルムは生き物のようなもので、わずか20ミクロンに約20層が重なっていて、それぞれ何十種類ものファインケミカル(光を感じる粒子、色を作る粒子、色を鮮明にする粒子、画像をシャープにする粒子など)が入っている。きちんと塗り重ね、各層にしかるべきものが入っているのか解析して品質を確かめてきました。

 この品質保証力が、バイオの世界における再現性と重なるんです。写真フィルムメーカーだからこそできる技であり、バイオの世界は会社のDNAとしてすごく親和性がある。故に細胞を安く大量に再現して産業化することをバイオ研究におけるわれわれのミッションに掲げました。

――研究開発の現場でもバイオとフィルムの技術は融合しているんですか。