政府・与党が進める社会保障・税一体改革は、消費税の使途に関する議論には熱心だが、消費税という税目そのものに関する議論は極めて手薄である。消費税はそれ自体、様々な課題を抱えており、税率引き上げが国民各層に受け入れられるためには、本来、そうした諸課題に関し議論が尽くされることが必要である。その1つが前回採り上げた医療に対する非課税の問題であり、問題先送りとなっていることは指摘した通りだ。今回は、消費税の地域主権のための財源としての適性という問題を採り上げる。

地方消費税の
理論的スキーム

 現在、消費税は税率5%のうち1%相当は地方消費税となっているが、さらに地方税としての拡充を求める声は少なくない。しかし、生産・流通・小売と多段階で課税される消費税はそもそも「地域主権」に適しておらず、そうした主張が地域主権に向けた改革の一環としてなされているならば、根本的な見直しが必要であろう。なお、地域主権とは、政府の定義を借りれば、地域に住む住民が地域のことを責任を持って決定することとされている。

 消費税は、地域のことを地域が決定するという地域主権に適していない。その最大の理由は、わが国の消費税が多段階課税の仕組みをとっているためである()。説明のため地方消費税の理論的なスキームを考えよう。税率1%、都道府県税としての地方消費税を想定する。なお、「理論的な」と断っているのは、後に述べるように、現実の地方消費税は理論的スキームに近づけることが、目指されているに過ぎないからである。

(注)消費に着目した消費税には多様なタイプがあり、課税段階の分類でいえば、後に述べる米国の小売売上税のように、単段階課税もある。