
国民年金が払えず、借金まで抱えるウーバー配達員に、ある日信じられない出会いが訪れます。相手は、2億円超の高級マンションに住む女性利用者。数回の配達をキッカケに「LINE交換しませんか?」と友達申請され、神戸牛ランチをご馳走になるなど、ありえない「おもてなし」を受けることに。価値観がすれ違う「異世界交流」の先に女性は何を求めていたのでしょうか。(ウーバー配達員ライター 佐藤大輝)
1配達員とお客様は「一期一会」が基本
20秒しかない“刹那のドラマ”
ウーバーの仕事で「同じお客様」に配送することは稀だ。僕はこれまでに(出前館とあわせて)7600回以上の配達をしてきたが、同じお届け先へ再訪した回数は50回もない。だからこそと言うべきか、飲み物やお菓子を差し入れされたり、チップを渡されたり……。相手からの純粋な善意が、僕は嬉しくて嬉しくてたまらない。
集合住宅にピザをお届けした際、年配の女性から「暑かったのに悪いねぇ。もしよければコレ飲んで」と渡された緑茶は、めちゃくちゃ美味しかった。お客様から缶コーヒーやチョコレート、塩あめなどをいただくこともあり、本当にありがたい。
チップをいただく機会も少なくない。激坂の上にある一軒家に焼き鳥をお届けしたとき、年配の男性から「君はそのアシストの付いてない自転車でここまで来たのか?」と驚かれた。そして「配達ありがとう。助かった。帰り道にこれで何か飲みなさい」と1000円札を渡されたときは、めちゃくちゃ嬉しかった。
クリスマスイブの日に40代くらいの女性から「遅い時間にありがとうね」と1000円札を渡されたこともある。雨の日に5000円札を渡されたことや、置き配の玄関前に「配達ありがとうございました」と書かれたメモと100円硬貨(チップ)が置かれていたこともあった。
ウーバー配達員とお客様は「一期一会」の関係が基本だ。しかも配達員とお客様が直接対面する時間は、おそらく20秒もない(置き配なら0秒だ)。しかし、そうした制約があるからこそ劇的な場面が生まれるのかもしれない。