「脱鉄道」はどこから?
むやみな拡大戦略はNG

 地下鉄というと道路の下に広大な「土地」を持っていると思われがちだが、トンネルのほとんどは地上の道路管理者から地下空間を借りて設置しているもので、自前の土地ではない。鉄道事業で利用する分には利用料は免除されているが、広告や店舗として使って収入を得る場合は、利用料を道路管理者に支払わなければならない。

 駅は建設費を節約するために無駄なスペースを省いて設計するので、新たに事業展開を行う余地は多くはない。店舗開発用の新たなスペースとしては、駅の改修にあわせて事務室や定期券発売所を移転集約するか、機械の小型化や省力化などで捻出するしかない。

 地下空間を拡張して店舗展開するというのはさらに難しい。規模にもよるが、道路を掘削し駅を拡張するためには数十億から数百億円の工事費を要するからだ。

 こうした事情を反映して、大阪メトロの中期経営計画でもリテール事業の見通しはほぼ横ばいとなっている。となれば、非鉄道事業をけん引していくのは都市開発事業しかない。

 デベロッパーのまね事をしても百戦錬磨の本職に勝てるわけがないので、当面は駅周辺の大規模開発に持ち分をもって参加する形になるだろう。これなら鉄道とのシナジー効果も期待できる。都市開発の具体的な候補地として挙げられている森之宮には地下鉄の検車場があり、夢洲には車庫予定地があることから、こうした用地の活用を想定しているものと思われる。

「失敗を恐れない挑戦」は重要だとしても、「脱鉄道」という言葉に踊らされて、鉄道で積み上げた優位を投げ打って勝負を挑んでも、勝ち目はない。

 本来、民営化の目的は「脱鉄道」そのものにあるのではなく、鉄道を軸に持続可能で独立した企業体になることにある。JR東日本の非鉄道事業が連結売上高に占める割合は依然として3割程度ではあるが、1997年から2017年までの20年間で非鉄道事業の売上高は約1.5倍、営業利益は3倍以上になっている。むやみに量の拡大を狙うのではなく、鉄道の優位を発揮できて、本業とシナジー効果が高い事業を育ててきた成果が出ている。

 はたして大阪メトロの民営化は成功するのか。今、第一歩が踏み出されようとしている。