社会がインターネットに介入できる「ガバナンス」を持つ必要がある

――サイバー空間が実際に行ける「場所」だと認識すると、考えなければならないことが増えるということですね。

 サイバー空間でビジネスをしている人たちについても考えなければなりません。例えば人間の行動に影響を与えるソーシャル・テクノロジー会社の役割です。

 あなたに会う2日前、フェイスブックの部長の一人が、内部告発者としてテレグラフ紙に話したのは、フェイスブックは利用者が中毒になるようにプラットフォームを設計しているということでした。さらにできるだけ多くの消費者をターゲットにしていることも暴露しました。

 そして今フェイスブックは新しいプラットフォームを始めました。それはFacebook Kidsというものだったと思いますが、6歳から12歳までの子どもをできるだけ多くターゲットにしようとするものです。

 私が言いたいのは、社会がサイバー空間にガバナンスを持つように介入しなければならないということです。サイバー空間に対する認識のパラダイムシフトと同時に、我々はサイバー空間に対するリアルワールドのインパクトやリアルワールドに対するサイバー空間のインパクトで何が起きているかということも、計算に入れなければなりません。その2つの空間には相互依存の、共生の関係があります。

 リアルワールドで我々が持っているガバナンス、優れた活動、共通善そのすべてがサイバー空間にも反映されなければなりません。でなければ、リアルワールドの秩序、社会秩序、家族内の秩序がもろに影響を受けます。

 これは規制のことではありません。規制によって問題を解決することはできません。なぜでしょうか。テクノロジーが我々が歩調をそろえることができないスピードで進化しているからです。

 これは行動科学に深くかかわる、重大な問題です。リアルワールドにおける運動器官の発達段階によると、3ヵ月で赤ちゃんは自分の頭を上げ、6ヵ月で起き上がって座ることができ、1歳で最初の言葉を発することができ、1歳半で歩くことができなければなりません。しかし、サイバー空間での認知機能の発達において、このようなガイドラインはありません。スマートフォンを子どもに渡す最適の年齢は何歳かとか、現時点で親に教えることができないのです。