ネット中毒でなく、ネット不適応と呼ぼう

――ということは『サイバー・エフェクト』は親のための本ということになりますね。

エイケン そうです。子どもがいる親のための本です。自分の子どもをいかにしてテクノロジーの世界をナビゲートしたらいいかを教えるための本です。我々はテクノロジーの時代に生きています。テクノロジーは我々が吸う空気や飲む水と同じくらい豊富にあります。普通中毒になると、その治療には節制が使われますが、テクノロジーには節制を使うことはできません。アルコール中毒であればアルコールを断つ。薬物中毒なら、薬物を断つことができますが、テクノロジーはそれができません。

 テクノロジーと我々の関係について、私は「中毒」ではなく、「不適応」と心理学的な表現を使っています。私はサイバー空間での不適応をサイバー不適応と呼びます。心理学では不適応行動と言うと、ナーバスになっているときに爪を噛むとか、恥ずかしいときに片手を口に当てるとか、そういうことが当てはまります(不登校や非行なども不適応行動とされる)。

 中毒でなく不適応行動と呼ぶことでポジティブなところは、実際にその行動を変えることができることです。ですからテクノロジーとの関係も変えることができるようにならなければなりません。

 人間とテクノロジーの共生関係はお互いにプラスになるものでなければなりません。共生というのは一緒に生きることであって、一つがもう一つを支配することではありません。もし我々がテクノロジーとの相互作用の結果、人間らしさを失えば、その関係は共生関係とは言えません。