「いったい何歳から子どもにはスマホやタブレットを持たせてもよいのか。動画やゲームに依存してしまったり、成長面で問題が出る心配はないのか」。せがまれればためらいながら使わせてはいるものの、漠然と不安と抵抗を感じている親は多い。世界中の子どもの親が直面するこの問題に、科学的にはっきりとした指針はないものなのか。
世界的サイバー心理学者として知られるメアリー・エイケン博士が、デジタル・テクノロジーが人間にどのような影響を与えるか、とりわけ子どもの成長への影響を発達段階ごとに見ながら、子育ての中での影響を科学的にまとめた話題の新刊『サイバー・エフェクト 子どもがネットに壊される――いまの科学が証明した子育てへの影響の真実』から、一部抜粋して紹介する。
振られた男女のリベンジ
オハイオ州の高校2年生で、快活でアーティスト風の少女ジェシー・ローガンは、ボーイフレンドからヌード写真を撮って送ってほしいと頼まれた。ローガンとボーイフレンドの関係が破局を迎えると、彼はローガンのヌード写真を高校の別の女生徒とシェアし、彼女のことを「尻軽」や「売女」などと罵り始めた。
ローガンは恥ずかしさのあまり、学校を休みがちになってしまった ― それは助けを求める叫びであり、ティーンエージャーが危機に直面している兆しだ。
母親のシンシア・ローガンは、学校から連絡があるまで、娘が授業を欠席していることを知らなかった。ジェシーが写真と、そこから生まれたいじめのことを打ち明けると、シンシアは学校に何らかの対応を取るように要請した。しかし、学校側が満足のいくような対応を行わなかったため、シンシアは娘を説得し、彼女を地元テレビ局に出演させた。番組の中で、自分に何が起きたのかを娘に説明させたのである。2008年5月のことだった。
ジェシーはインタビュアーに対してこう語った。「私はただ、二度と同じような目に遭う人が出てこないことを願っています」。2ヵ月後、彼女は自宅のベッドルームで首を吊った。
まだ18歳だった。
この話をしたのは、みなさんにショックを与えるためではない。親やメディア、学校、裁判所がセクスティングをどう扱うかは、セクスティングという行為自体よりも危険をはらんでいる可能性がある、ということを理解してもらうためである。
ジェシーの自殺という悲劇は、もう一つの重要な点に目を向けさせる。自傷を行っている10代、そしてそれよりも幼い子どもたちの数は、かつてないほど増加している。
こうした状況を緊急に調査し、原因を追及すべきだ。自己破壊的な行動が、脆弱な若者をターゲットとするサイトやフォーラムで手に入る情報によって増幅され、促進されている。これは最悪のサイバー効果だ。
恋人に振られた元彼や元彼女が、「やり返す」ために相手のわいせつな画像をシェアする行為には、名前が付けられている ―「リベンジ(復讐)ポルノ」である。リベンジポルノはメディアで大きく取り上げられ、議論されている。しかしそれを「ポルノ」と呼ぶのは適切だろうか?
前述のように、そうした写真を撮る意図は、市場に出回るポルノグラフィーを撮影する意図とはまったく異なる。にもかかわらず「リベンジポルノ」という名前を付けるのは、犠牲者をさらに傷つける結果になるだろう。
ただ呼び名はどうであれ、この行為が過激化することを抑えようという試みが、いま数多く行われている。しかしリベンジポルノという名前がメディアによって付けられるまで、当局はこの問題に対してどう対応すればよいのか、長い間結論を出せずにいた。